KJ法は膨大な情報・アイデアを効率よくまとめることができる手法ですが、参加者の資質やパワーバランスによって大きな偏りが生じるといった注意点があります。また手間や時間もかかりますが、それらを上回る利点が大きいため多くの企業で用いられています。KJ法を初めて使うときはメリットやデメリットをよく知ったうえで行うことをお勧めします。この記事ではKJ法のメリットとデメリットについてと、KJ法のやり方や注意点を分かりやすく解説しています。
part1:KJ法とは?ブレインストーミング(BS)とは?
KJ法とブレインストーミングはそれぞれ別々に考案されましたが、相性が良いためセットで使われることが多いです。
ただ、KJ法とセットで使う場合、ブレインストーミングは通常のものと少し違います。
1.1 KJ法とは?
KJ法は1967年に文化人類学者「川喜田二郎」氏によりに考案されました。KJという名前は考案者の頭文字に由来しています。
KJ法では付箋やカードに持ち寄ったアイデアや情報を書き込んでいきます。それをグループ化し整理して最終的に文章でまとめる手法です。
当初は文化人類学の野外調査で得た膨大な量のデータを効率的に整理するために考えられたKJ法ですが、他の分野でも幅広く活用されるようになりました。
1.2 ブレインストーミング(BS)とは?
KJ法を始める前には対象となるアイデアやデータを洗い出しする必要があります。この作業で代表的なものがブレインストーミングという手法で、「BS」あるいは「ブレスト」と略されることがあります。
ブレインストーミングとは会議方式の一つで集団思考、集団発想ともいい、アイデアを出し合う技法のことです。
このブレインストーミングには4つの原則があります。
ブレインストーミングの4原則
- 批判禁止:他人の意見に批判をすると他の意見が出なくなる。
- 自由奔放:どんな意見を言っても構わない。冗談のような意見でも良い。
- 質より量:どんな意見でもかまわない。なるべく多くの意見を出す。
- 結合改善:他人の意見から連想して別のアイデアが生まれる。
ブレインストーミングを行う人数には制限がありませんが5名から10名が良いと云われています。また少人数の班構成にして班ごとのアイデアを持ち寄るという方法もあります。
※通常のブレインストーミングとKJ法で使う場合ブレインストーミングの違い
- 通常のブレインストーミングはホワイトボードなどにアイデアや情報を書き込んでいきますが、KJ法で使う場合は各自のアイデアなどをカードに記入しボードに貼り付けていきます。
- 通常のブレインストーミングは「批判禁止」の原則があるので批判をしてはいけないのですが、KJ法ではこういった批判的な意見も問題解決に重要な要素としてリストアップしていきます。
Part2:KJ法のメリット、デメリット
KJ法には一見良いことばかりのようにみえますが、実はデメリットもあります。
KJ法を使う前にメリットとデメリットをよく理解してください。
2.1 KJ法のメリット
KJ法のメリットは大きく分けて次の3つです。
2.1.1アイデアや情報を可視化して整理、共有ができる
頭の中のアイデアや情報をカードに記入して可視化することで多くの情報を整理できるようになります。
可視化することでメンバー間の情報共有ができ、新たな問題点やアイデアが浮かびやすくなります。
2.1.2ロジカルシンキング(論理的思考)でまとめられる
ロジカルシンキング(論理的思考)とは道理に沿って筋道をたてることです。
KJ法はやり方そのものが論理的に作られているので参加者全員に感覚的に理解されやすくアイデアや情報をまとめやすくなります。
2.1.3少数意見も活用できる
一般的に、少数意見は多数意見によって除外されがちですが、KJ法では少数意見も一つのカードとして扱います。
時間や費用の面で多数意見だけに絞って進めることは一見効率的に見えますが、必ずしもそうではありません。多数派から除外された意見の中にも問題の本質を捉えている意見が少なからずあるからです。
KJ法では少数意見の重要性を参加者全員に理解させて実施するようにします。
2.2 KJ法のデメリット
KJ法のデメリットは次の2つです。
2.2.1時間がかかる
KJ法では参加者を集めこれらのメンバーから出たアイデアや情報をカードに書き出す作業が必要です。KJ法は準備の段階から時間がかかります。
KJ法では参加者から集まったアイデアをまとめて最終的に文章化されるまでかなりの時間を要します。短時間でアイデアを出したり問題を解決したりするといった場合にはKJ法は使えません。
2.2.2参加者の質やバランスによって意見に偏りが生じる
KJ法やブレインストーミングは参加者選びが最初の大仕事ですが、参加するメンバーによって意見が大きく変わってきます。
議論は平等に行われなければなりませんが、上司と部下といった上下関係があれば対立した意見を言いづらいというケースもあるかもしれません。
また参加者によっては同じような意見ばかりに偏ることもあります。
こういった事を防ぐために参加者を選ぶ時は上下関係や性格などを考慮する必要があります。
part3:KJ法のやり方と手順
それではKJ法のやり方を次のステップに沿って説明します。
ステップ①カードにアイデア・意見を記入する
ブレインストーミングで出たアイデアや意見をカードに記入します。
重要なのはカード一枚に一つだけ記入することです。二つ以上の記入はいけません!
記入したカードはボードに貼っていきます。
ステップ②アイデア・意見を整頓しグループ化する
貼られたカードを整頓し関連性のある2~3ほどの小グループの束を作り、それぞれのグループには名前を付けます。
関連のある小グループ同士を更にまとめ大グループの束を作り名前を付けます。
ステップ③グループを関係性に並び替え図解化する
大グループの束を関連性がわかるように並び替えます。これを「空間配置」といいます。
空間配置が終わったらグループの束を隣と混ざらないようバラしてそれぞれの関係を図解化します。
※関係性を表す一例
- 「関係あり」:直線
- 「対立」:破線
- 「原因→結果」:一方向矢印
- 「互いに因果関係」:双方向矢印
このように予め分かりやすい矢印や記号で表すよう決めておきます。
ステップ④図解化した関係性を文章化する
KJ法の最終段階で最も時間のかかるところです。ステップ③で作成した相関図を元に文章を起こす作業です。
それぞれのグループ単位でカードの記述をつなげて文章としてまとめていきます。
文章として不自然になる場合は何かが抜けている可能性があるので再検討する必要があります。
必要であれば前のステップに戻ってカードの追加や修正をしてもかまいません。
図解化して最も重要と思えるグループを参加者全員で協議を行い全体で理解と共有をしていきます。
part4:KJ法の注意点
4.1参加者全員の同意を得て作業を進める
一部の力のある参加者の考えで進めてしまうことは、偏りや先入観により誤った方向に向かう恐れがあります。
プロセスを進めるときは議論を行い必ず全員の同意を得てから進めます。こうすることで精度の高い結果につながります。
4.2カードのグループ化は小から始める
グループ化は小から始めます。理由は最初から大きなグループにすると方向性が限定的になってしまうからです。
すべてのカードを無理やりグループ化させる必要はありません。どこのグループにも属さないカードは新たな発見につながる可能性があるので単独で残しておきます。
4.3最後の文章化まで妥協しない
この文章化の作業は容易なものではありません。何度もやり直しや修正で多くの時間が必要になります。辛くてもしっかり最後までやりきることが重要です。
何度も悩みながら修正する作業のなかから新たなアイデアや別の問題点を発見することがあるのです。
まとめ
KJ法とは「川喜田二郎」氏が考案した手法で、簡単な手法ながら膨大な量のデータを効率的に整理することができます。それによって問題点や今までわからなかったことが発見できるため、KJ法は多くの企業で広く活用されています。
KJ法を行うには事前準備が必要です。事前準備はブレインストーミングを行うのが一般的です。
KJ法を始める前にメリットやデメリットをよく理解しておきましょう。そして諦めずに最後の文章化まで完遂させなければKJ法を行ったとはいえません。
KJ法を考案した川喜田氏は「KJ法は実際にやってみないとわからない」と言っていたそうです。
企業の業績改善に、あなたや仲間のスキルアップにKJ法をぜひ取り入れてください。
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