機械設計において、図面の理解と作成は基本スキルです。その中でも「仕上げ記号」は、部品の表面状態や加工指示を伝える重要な要素です。しかし、初心者にとって記号の種類や使い方を覚えるのは難しそうに感じるかもしれません。
本記事では、仕上げ記号の基礎知識から具体的な活用方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。また、すぐに使える素材も提供し、効率的に図面作成を進められる方法を紹介します。これを機に、仕上げ記号を正確に使いこなし、エンジニアとしてのスキルを向上させましょう。
1. 仕上げ記号とは
仕上げ記号は、図面上で部品の表面状態や加工方法を指示するための記号です。これにより、製造現場での加工精度や仕上げ方法が統一され、品質を確保できます。具体的には、表面の粗さ(仕上げの滑らかさ)や加工方向、仕上げに使用する工具の指定などがあります。
表面記号、仕上げ記号、面粗度記号の比較
表面記号
表面記号は、加工面の状態を示す記号の総称です。表面記号には仕上げ記号や面粗度記号も含まれますが、一般的には「見た目」や「触感」などの仕上がり全般を指します。
仕上げ記号
仕上げ記号は、加工工程や仕上げ方法を詳細に指示するための記号です。例えば「手仕上げ」や「工具による加工」また「節目方向」など、具体的な加工内容を示します。この記号を使うことで、製造者が作業内容を一目で理解できるようになります。
面粗度記号
面粗度記号は、部品の表面の滑らかさを数値で表す記号です。「Ra」「Rz」などの値を用いて表現し、必要な加工精度を明確化します。例えば、Ra=0.8µmと指示されていれば、それに応じた滑らかさを保証する仕上げが必要です。
仕上げ記号が重要な理由
仕上げ記号は、製品の機能や耐久性に直接影響を与える重要な要素です。滑らかな表面は摩擦を減らし、精密な部品同士の動作をスムーズにします。また、粗さの指定がない場合、不適切な仕上げによって部品が早期に劣化する可能性もあります。
2. 仕上げ記号一覧
仕上げ記号にはさまざまな種類があり、それぞれの記号が異なる加工内容や仕上げ状態を指示します。このセクションでは、主な仕上げ記号とその意味を整理し、実務でよく使用される例も含めて解説します。
2.1 新・旧記号の違い
表面粗さを示す記号は、JIS規格の改訂によって進化しています。旧JIS規格では、表面仕上げを主にRa(算術平均粗さ)やRz(十点平均粗さ)のみで示していました。この方式はシンプルでわかりやすい反面、指示できる内容が限定されていました。
一方、新JIS規格では、記号の種類や表記方法が拡充され、より複雑で詳細な表面仕上げの指示が可能になりました。これにより、製品の設計意図をより正確に伝えられるようになり、加工精度の向上や品質の安定化に寄与しています。
(引用元:日経クロステック)
2.2 除去加工の要否
表面仕上げの記号には、素材表面を加工する必要があるかどうかを示す情報が含まれています。特に、除去加工が必要か否かを明示することは、加工工程の選定や品質管理において非常に重要です。
除去加工指示により、製造現場では不要な加工を避けることでコストや時間の削減になります。また、設計者は仕上げ品質の要件に応じて適切な加工指示を選択できるため、意図した仕様を正確に伝えることができます。
除去加工の要否を正しく理解し活用することは、効率的で無駄のない製造工程を決めるための基盤となるでしょう。
(引用元:SAKUSAKU)
2.3 加工方法の指示
仕上げ記号は、表面の粗さだけでなく、特定の加工方法を指示するためにも使用されます。これにより、設計者は意図した機能や外観を実現するための加工プロセスを明確に伝えることができます。加工方法の指示は、記号に追加される補助情報や付加記号を通じて表します。
(引用元:日新産業株式会社)
2.4 筋目方向の指示
仕上げ記号には、加工面の表面に現れる筋目(加工痕)の方向を指示するための情報を付加することもできます。筋目方向は部品の機能性や外観品質に影響を与える重要な要素であり、特に摩擦や密着性が関わる用途ではその指示が欠かせません。
(引用元:日新産業株式会社)
2.5 面粗度値の指示
仕上げ記号には、部品表面の滑らかさや粗さを定量的に示すために面粗度値を記載することができます。面粗度は部品の機能性や寿命、外観に大きな影響を与えるため、設計時や製造時に非常に重要な情報です。
(引用元:旋盤情報局)
3. 仕上げ記号を図面に記入する方法
仕上げ記号を図面に正確に記入することは、加工の意図を正確に伝える上で非常に重要です。ここでは、提供する素材を活用する方法と、ゼロから記入する方法の2つを詳しく説明します。どちらも簡単に実践できる内容になります。
方法1:素材を活用する
素材を活用すれば、仕上げ記号を効率的に記入できます。
以下の手順で作業を進めましょう。
① 素材をダウンロードする
・今回は提供するEdrawMax形式のテンプレートファイルをダウンロードします。
・ファイルには一般的な仕上げ記号や粗さ値の指定が組み込まれているため、すぐに使用できます。
ここからダウンロード
② 素材をEdrawMaxで開く
・EdrawMaxでダウンロードした素材を開きます。
・テンプレートには、基本記号を組み合わせることで必要に応じた記号を簡単に作成できます。
③ 記号を配置する
・記号をコピーして貼り付けてドラッグ&ドロップで図面に配置します。
・位置やサイズの調整は簡単で、指示に応じて粗さ値や加工方向の文字の編集も可能です。
④ 特定の記号をカスタマイズして保存
・作成した記号をカスタマイズし、ライブラリに保存することで、次回以降使用する際に作業効率が上がります。
補足1:CADのDXFやDWGファイル
必要に応じて、DXFやDWG形式のファイルをEdrawMaxにインポートし、既存図面に追加することも可能です。
手順は、EdrawMaxの「ファイル」メニューから「インポート」を選択し、ダウンロードした素材を開きます。
方法2:ゼロから作成する
素材を使わずに仕上げ記号をゼロから作成する場合も、EdrawMaxの機能を活用することができます。
① 記号の基本構成を理解する
仕上げ記号は線をベースに、水平線や角度をつけた線、数値、文字の指示で構成されます。
・線:基本となる加工指示の枠線。
・水平線:手仕上げや機械加工を区別するための指示。
・数値、文字:粗さ値(例: Ra=3.2)や節目方向(例:×クロス)を記入。
② EdrawMaxで記号を作成する
・線分ツールを使い、記号の枠線や加工指示の水平線を引きます。
・テキストツールで粗さ値や方向性を追加します。フォントやサイズも図面に合わせて調整します。
③ 作成した記号を保存する
・作成した記号をライブラリに保存します。今後の図面作成時に再利用が可能になります。
補足2:EdrawMaxの活用ポイント
・素材から記号を配置する場合でも、ゼロから作成する場合でも、EdrawMaxのスナップ機能や配置タブから整列することで記号を均等に配置できます。
・記号を使用した図面をPDFやJPGファイルなどにエクスポートできるため、他のソフトとの連携も行えます。
4. よくある質問
4.1 表面仕上げの測定と検査には、どのような規格と仕様があるのか?
表面仕上げの測定と検査には、主に国際標準化機構(ISO)や日本工業規格(JIS)の規格が使用されます。たとえば、JIS B 0601は表面粗さの定義や測定方法を規定しており、ISO 4287も同様の指針を提供しています。
測定には触針式や非接触式の装置が利用され、評価項目として「Ra(算術平均粗さ)」や「Rz(最大高さ粗さ)」が頻繁に用いられます。選定した規格に基づき、仕上げ記号と実際の表面仕上げが一致するかどうかを確認します。
4.2 表面仕上げの「Ra」「Rz」とは何ですか?
「Ra」と「Rz」は、表面粗さを数値で表す主要な指標です。
・Ra(算術平均粗さ)
表面の凹凸を平均化した値で、全体的な平面さを示します。数値が小さいほど滑らかな表面を意味します。
・Rz(最大高さ粗さ)
表面の最大高低差を測定し、その平均値を算出したものです。局所的な粗さがどの程度あるかを把握できます。
これらの指標は用途に応じて使い分けられ、精密機械や工具部品の仕上げにおいて重要な判断基準となります。
4.3 筋目の方向について、簡単に紹介してください
仕上げ記号に付加される「筋目の方向」は、表面加工のパターンを示します。代表的な例として以下があります。
・平行筋目:表面の加工跡が一定方向に平行する場合を示します。
・円形筋目:円形に放射状の加工跡がある場合に使用されます。
・交差筋目:加工跡が直角に交差する場合を示します。
筋目の方向は仕上げの美観や性能に影響を与えるため、設計時や加工指示時に明確に指定することが重要です。(2.4 筋目方向の指示参照)
まとめ
仕上げ記号は、製品の品質や加工条件を明確に伝える重要な要素です。
本記事では、仕上げ記号の基本知識、一覧、記入方法を紹介しました。特に、EdrawMaxを活用することで、効率的に仕上げ記号を作成・編集できる点は、初心者にとって大きな助けとなるでしょう。
正確な仕上げ記号の理解と活用は、製品精度を向上させるだけでなく、作業工程の無駄を減らし、チーム間の意思疎通を円滑にします。
本記事を参考に、ぜひ実務で仕上げ記号を活用してみてください。EdrawMaxの便利な機能は無料で体験できますので是非お試しください。