電気回路の業務に携わっていると、整流回路という言葉を耳にすることがあります。電子機器から鉄道車両まで幅広い分野に使用されている回路であり、現代社会を支える重要な要素となっています。本記事では整流回路に関する知識や描き方を分かりやすく説明します
1.整流回路とは?
1.1 定義
整流回路とは、交流を直流に変換するための回路です。交流は電圧の向きを周期的に変えるのに対し、直流は電圧の向きが常に一方向の電気です。整流回路は交流の波形を利用して交流の一方向の成分のみを取り出し、直流に変換するために使用されます。一般的な家庭用コンセントの電源は交流電源ですが、スマートフォンなどの電子回路で使用される電源は直流です。したがって、整流回路は電源装置やオーディオ機器、コンピュータなど、交流電源を直流で使用する多くの電子機器に必要不可欠な回路です。
1.2 動作の仕組み
上記は原始的な整流回路の図です。整流回路は交流電源にダイオードやサイリスタを使用し、一方向の電圧以外をシャットダウンする仕組みです。ダイオードなどを使用して交流信号の一方の半周期のみを通過させ、負の半周期はブロックします。これにより、出力は一方向の電流だけが流れます。ただし、この場合は電流波形の波は残るため、整流後に完全な直流を得るためにフィルタ回路でさらに処理することが多いです。また、サイリスタは半導体のスイッチング素子で、特定の条件下で導通と遮断を制御できるため、整流回路においても利用されています。高出力にしたい場合はダイオードよりもサイリスタを使用されることが多いです。
2.整流回路の種類と例
整流回路には以下のような種類が存在します。
2.1 半波整流回路
半波整流回路は交流電源のうち、片方の半周期だけを取り出して直流に変換する回路です。最も基本的な整流回路の一つで、非常にシンプルで安価ですが、出力電圧を半分しか取り出せないという欠点があります。通常は1つのダイオードを使って構成されます。交流の波形のうち一方向のみを通過させ、逆方向では電流の流れを遮断します。効率が低いため、大電力を必要とする場合には不向きです。したがって、小型の電源装置などに採用されます。
2.2 全波整流回路
全波整流回路は交流電源の両方の半周期を利用して、直流に変換する整流回路です。半波整流回路では交流の一方の半周期しか整流できませんが、全波整流回路では交流信号の両半周期を使用するため、より効率的に直流出力を得ることができます。
一般的な仕組みは、上記のブリッジ整流回路です。ブリッジ整流回路は4つのダイオードを使用して、交流の両方の半周期を整流します。どちらの半周期でも常にダイオードが導通し、電流が一方向に流れるように制御しています。したがって、半端整流回路よりも大電力を必要とする用途に使用することが可能です。
2.3 平滑全波整流回路
全波整流回路の出力波形に含まれるリップル(波形の揺れ)を減少させるために使用される回路です。全波整流回路は出力の直流成分に波形の揺れが含まれますが、平滑コンデンサを加えることで出力のリップルを大幅に減らし、より安定した直流を得ることができます。家庭用電源アダプターやコンピュータの電源など、現代の整流回路にはほとんど平滑回路込みの整流回路が使用されます。
3.整流回路が使われるケース
3.1 電源装置
家庭用電気機器や産業用機器のほとんどは交流電源を使用していますが、内部で動作する電子回路には直流電源が必要です。したがって、スマートフォンの充電器やPCの電源などに広く利用されます。また、産業機械の制御回路や信号処理装置に電力を供給するための電源ユニットにも使用されます。
3.2 充電ユニット
整流回路はバッテリーを充電する際にも使用されます。交流電源を直流に変換することで、バッテリーに適した電力を供給することが可能です。電動車や無停電電源装置の充電器などがその一例です。
3.3 直流モーター
直流モーターは直流電源で駆動しますが、交流電源を使う場合は整流回路で直流に変換してからモーターを駆動します。直流モーターは速度制御性などに優れているため、産業用ロボットなどに広く利用されています。
4.整流回路の書き方とルール
電気回路を設計する際、整流回路図を描く機会もあります。整流回路図を描くためのソフトはAutoCADやjWCADなど、多くの種類が存在します。本記事では整流回路の書き方とルールを、初心者にも使用しやすいEdrawMaxを使用して説明します。
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4.1 図面記号の貼り付け
まずは、回路図の部品要素となる部分を配置してきます。AutoCADなどで作成する場合、部品素子の記号を一から作らなければならない場合があります。EdrawMaxには豊富な図形がプリセットされているため、整流回路に必要なダイオードやサイリスタなどの回路記号を、検索窓で検索することで簡単に見つけることができます。また、クリックするだけで図面上に貼り付けることができ、操作も容易です。
4.2 配線の接続
配置した部品要素記号に、配線を接続していきます。一般的な回路図では電源を左側に記載し、右側に部品素子を並べることが多いです。図面の要件に応じて、使用する配線の種類を矢印で記載することもあります。配線を接続しない箇所はそのままクロスさせたり、半円にして避けたりします。配線を接続する箇所は、点を付けることが多いです。
EdrawMaxであれば、コネクタを使用することで各部品記号同士をマウス操作だけで接続することが可能です。接続箇所の点も、コネクタ終端を操作することで容易に付与できます。
4.3 情報の記載
図面の要件に応じて、電源電圧や定格電流などの情報を記載していきます。メーカーや型式を付与する場合もあります。情報を細かく記載することで、回路図の整合性が取れていることを確認できるようになります。
5.おすすめの回路図作成ツールEdrawMax
EdrawMaxは回路図作成に特化した強力なツールで、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに適しています。
特徴1.豊富なシンボルとテンプレート
EdrawMaxは、電子回路や電気回路、配線図など、様々な種類の回路図に対応するため、豊富なシンボルがあらかじめ用意されています。トランジスタや抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの電子部品をはじめ、AC/DC回路や配電システムなどの多くの分野の回路図に必要なシンボルを使用可能です。テンプレートが豊富なので、ゼロからデザインを開始する必要がなく、既存のテンプレートを基に修正することで時間を大幅に節約できます。
特徴2.使いやすいインターフェイス
直感的なドラッグ&ドロップ操作により、回路図の作成が非常に簡単です。部品をキャンバスにドラッグし、適切な位置に配置するだけで、複雑な回路図も簡単に作成できます。また、各部品への配線接続作業もスムーズに行えるため、ミスなく正確な接続が可能です。
線の太さや色、スタイルなどをカスタマイズできる機能を有し、回路図をより視覚的に分かりやすくすることができます。
特徴3.エクスポート・共有機能
作成した回路図はPDF、JPEG、PNG、SVG、Visio、DWGなど、多数の形式でエクスポート可能です。他のツールと互換性が取れているため、チームでの共有が容易になります。また、オンラインで回路図を共有することもでき、エクスポート後に電子メールで送信したり、ファイルをクラウドで保存したりすることも可能です。
6.整流回路に関するFAQs
6.1 整流回路で使用されるダイオードの種類は?
整流回路で使用されるダイオードには、いくつかの種類があります。最も一般的なのはシリコンダイオードです。安価かつ高電圧・高電流に対応し、様々な電源で広く利用されます。その他にはゲルマニウムダイオードやシリコンカーバイドダイオードなども使用される場合があります。
6.2 整流回路の出力電圧は?
整流回路の出力電圧は入力される交流の電圧と整流方式によって異なります。半波整流回路の出力電圧は交流のピーク電圧の約0.318倍となります。全波整流回路の電圧は入力交流のピーク電圧の約0.636倍です。平滑コンデンサーを用いた場合は、交流のピーク電圧の出力を得ることが可能です。