機械設計において、正確な図面は製品の品質を左右します。その中でも、幾何公差記号は部品の製造や検査に欠かせない重要な要素です。しかし、新入社員や初心者にとって、これらの記号やその使い方を理解することは難しいと感じられることがあります。
本記事では、幾何公差の基本概念から記号一覧、そして具体的な活用方法までを分かりやすく解説します。設計業務で役立つ素材やツールの使い方も紹介するので、これから幾何公差を学びたい方はぜひご活用ください。
1.幾何公差とは?
幾何公差とは、部品の形状や位置関係、姿勢などを許容範囲として指定するために必要な公差です。寸法公差がサイズそのもののばらつきを管理するのに対し、幾何公差は形状や位置関係のばらつきを管理します。これにより、部品が設計意図どおりに組み立てられることを保証し、品質を確保する役割を果たします。
例えば、寸法公差のみで管理された部品では、形状の歪みやずれによって意図した機能を果たせない場合があります。一方で幾何公差を用いると、設計者は機能を維持するために必要な条件を明確に示すことができことで、部品の製造や検査が効率化し、不良品の発生を抑制できます。
また、幾何公差は国際規格(ISO 1101など)やJIS規格(JIS B 0021など)に準拠しており、これらの規格を理解することで海外との取引や共同設計においても共通の言語として共有できます。現代の製造業では、精密な部品が必要とされる場面が増えており、幾何公差の重要性はますます高まっています。
2.幾何公差の種類
幾何公差は、大きく以下の4種類に分類されます。
・形状公差
部品の形状そのものの正確さを定義します。例えば、直線度、平面度、円筒度などが含まれます。
・姿勢公差
部品の基準となる面や軸に対しての傾きや角度を規定します。平行度、直角度、傾斜度などが該当します。
・位置公差
特定の位置関係や間隔を正確に定義します。位置度、同心度、対称度などが含まれます。
・振れ公差
部品の回転中の振れを規定します。同軸度や全振れが該当します。
これらの分類に基づき、設計者は部品の用途や性能要件に応じて適切な公差を指定することで、品質を確保しています。
3.幾何公差記号一覧
幾何公差記号は、設計図面上で使用される特定の記号で、形状、位置、姿勢、および振れに関する許容値を示します。これにより、部品の製造や検査において必要な基準が明確になります。本セクションでは、幾何公差記号をJIS規格に基づき分類し、主要な記号の用途を解説します。(参照元:機械製図)
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形状公差
形状そのものの正確さを定義する公差で、以下の記号があります。
● 直線度:要素が直線に近いことを保証します。
● 平面度:面が完全に平坦であることを示します。
● 円筒度:円筒形状が歪んでいないことを保証します。
● 真円度:円形が正確であることを示します。
姿勢公差
基準面や基準軸に対する部品の向きを管理する公差です。
● 平行度: 基準となる面や軸に対して平行であることを保証します。
● 直角度: 基準に対して垂直であることを規定します。
● 傾斜度: 基準に対して一定の角度で傾いていることを示します。
位置公差
部品間の位置関係や間隔を管理するための公差です。
● 位置度: 特定の位置の正確さを規定します。
● 同心度: 複数の円形が共通の中心を持つことを保証します。
● 対称度: 要素が基準軸や基準面に対して対称であることを示します。
振れ公差
回転部品の振れやずれを制御するための公差です。
● 円周振れ: 回転時の円周方向の振れを管理します。
● 全振れ : 回転時の全体的な振れを管理します。
付加記号
幾何公差を補足するための記号で、条件をさらに詳細に指定する際に用いられます。
● データム記号 : 基準となる面や軸を指定します。
● 最大実体公差: 実際の部品が最大許容寸法である場合の条件を表します。
● 最小実体公差: 最小許容寸法である場合の条件を示します。
これらの記号を正しく理解し使用することで、設計図面が明確になり、製造と検査の効率が向上します。次章では、これらの記号を実際にどのように使用するかを具体例とともに解説します。
4.幾何公差記号の使い方
幾何公差記号を正確に使いこなすことは、設計図面の効率的な作成や修正に直結します。このセクションでは、具体的な活用手順を解説します。
① 素材をダウンロードする
提供されているCADデータや幾何公差記号素材をダウンロードします。今回は、こちらからeddx形式の素材をダウンロードして使用します。
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② EdrawMaxで素材を開く
EdrawMaxなどの図面作成ツールを利用して、ダウンロードした素材をインポートします。この幾何公差記号素材はドラッグ&ドロップで簡単に図面に配置できるため、初心者でも直感的に扱えます。
③ EdrawMaxで幾何公差記号を配置する
図面上に記号を配置する際には、以下のポイントに注意しましょう。
- データム基準を明確に定義する。
- 設計意図を正確に反映させるように、適切な位置や向きに配置する。
- 必要に応じて、補足的な寸法記号や注釈を追加して、解釈の余地を最小限にする。
④ 特定の記号を作成し、ライブラリに保存する
必要に応じて、カスタムした幾何公差記号をEdrawMaxの描画機能を使用して作成することもできます。作成した記号はライブラリに保存しておくと、次回以降の作業で簡単に再利用できます。
EdrawMaxを使えば、幾何公差記号を含む寸法公差記号を簡単に作成・編集できます。この柔軟性と多機能性は、幅広いユーザーにとっての大きなメリットになります。
5.幾何公差に関するよくある質問
幾何公差については、初心者が抱きやすい疑問がいくつかあります。本項では、その中でも特に重要な3つの質問について解説します。
5.1 幾何公差に関連する国際規格は?
幾何公差は、設計や製造のグローバルな標準化を支えるために、国際規格に基づいています。最も一般的な国際規格はISO 1101であり、幾何公差の基本的な記号や適用方法を規定しています。また、日本国内ではJIS B 0021が対応する規格として広く使用されています。
これらの規格は、異なる国や地域の設計者間での共通理解に繋がります。例えば、部品を海外の工場で製造する場合でも、幾何公差記号を正しく使用すれば、設計意図が正確に伝わります。そのため、これらの国際規格を理解することは、エンジニアとしてのスキル向上に欠かせません。
5.2 幾何公差の適用方法は?
幾何公差を設計図面に適用する際には、いくつかのステップがあります。
- 重要な機能を特定する:部品のどの部分が機能に直結しているかを判断します。
- 適切な基準を選定する:データム基準を設定し、それに基づいて公差を指定します。
- 記号を配置する:適切な幾何公差記号を図面上に配置し、必要な許容値を記載します。
- 注釈を追加する:必要に応じて補足説明を加え、誤解を防ぎます。
これらの手順を徹底することで、設計図面の精度が向上し、製造プロセスがスムーズに進行します。
5.3 データムとは?幾何公差との関係は?
データムとは、部品の寸法や幾何公差を規定する際の基準となる面や軸を指します。幾何公差を正しく適用するためには、データムの設定が不可欠です。
例えば、ある部品の穴の位置を管理する場合、部品の外形が基準となるデータムとして指定されることがあります。この基準に対して、穴の位置度が指定されることで、製造や検査が容易になります。
データムは、設計図面上でデータム記号(通常は四角形の枠内にアルファベットを記載)として表示されます。データムを適切に設定することで、部品間の組み立てがスムーズに行えるようになります。
まとめ
幾何公差記号は、設計者と製造現場を繋ぐ重要な役割を果たします。
本記事では、基本的な概念、記号の種類、活用方法について解説しました。幾何公差を正しく理解し活用することで、設計精度が向上し、製造トラブルを減らすことができます。
今回使用したEdrawMaxを活用し、効率的な図面作成を目指しましょう。無料体験版もありますのでぜひお試しください。