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分布定数回路とは?基本知識・読み方を分かりやすく解説

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編集者: Edraw

電気回路の分野において、分布定数回路という概念があります。現実の複雑な回路を簡易化できる点が特徴で、長距離信号伝送や送配電の分野において広く利用されています。本記事では、分布定数回路の基本概念の説明に加え、その設計時の記載方法などのポイントについて、わかりやすく解説します。

1.分布定数回路とは?基本概念を解説

分布定数回路とは

分布定数回路とは、電気回路において抵抗値やインピーダンスといった電気的特性が回路全体に連続的に分布していると仮定するモデルです。分布定数回路では電圧や電流が位置ごとに異なり、その差異を計算できるようになっています。この性質により、時間や空間における信号伝搬や干渉などの現象を正確に解析することが可能です。

分布定数回路を理解する上で、集中定数回路との違いを考えると分かりやすくなります。

集中定数回路の例

集中定数回路では抵抗やインダクタンスなどの特性は回路全体に対して1点に集中していると仮定した回路です。一般的な回路図は集中定数回路であり、抵抗器やコンデンサなどの部品が特定位置に配置され、それぞれ独立した役割を果たします。回路を単純化したモデルであり、小規模な回路においては非常に有効です。

一方で、分布定数回路では、これらの特性が回路全体にわたって連続的に分布していると考えます。これにより、回路内の任意の位置での電圧や電流が異なるため、従来のキルヒホッフの法則だけでは十分に解析できません。その代わり、テレグラフ方程式などの波動方程式を用いて、電気の伝搬を解析します。このモデルは、特に信号の波長が回路の物理的寸法と同程度かそれ以上の場合や、電圧降下や電流の分布を無視できない巨大な回路で必要となります。

  分布定数回路 集中定数回路
特徴 回路全体にインピーダンスなどの要素が連続して分布している。 インピーダンスなどの要素が一カ所に集中して仮定されている。
使用場面 長距離通信における誘導・反射などの影響
または長距離送電網の電圧降下など
一般回路や小規模な回路
関連する数式 テレグラフ方程式 キルヒホッフの法則

2.分布定数回路はなぜ使われる?

分布定数回路は信号の長距離通信回路の設計や、長距離送電線などにおいて使用されます。

分布定数回路では、回路内の電圧や電流が一様ではなく、位置によって連続的に変化します。特に信号の波長が回路の物理的寸法と同程度以上になる場合、反射や減衰などの波動現象が顕著になり、集中定数モデルではこれらを正確に解析できません。分布定数モデルを用いることで、これらの現象を定量的に解析し、設計や制御に役立てることが可能です。

また、送電線や配電線は長距離にわたり電力を伝送するため、その長さは数十kmオーダー、またはそれ以上になることがあります。特に送電線の長さが100 kmを超える場合、電圧や電流の分布特性を無視することができず、分布定数回路のモデルを使用して解析する必要があります。

3.分布定数回路の読み方

分布定数回路では、回路の各特性が単位長さあたりで分布していると仮定されます。それぞれの成分は集中定数回路と同様に素子などで表されますが、EdraMaxにはプリセットとして登録されているものも多いです。以下のような記号で定義されます。

3.1 抵抗(Ω/m)

抵抗の記号

単位長さあたりの伝送線路の導体抵抗を表します。伝送線路を構成する材料の抵抗率と線路の断面積及び長さによって値が決まります。

導体内での電流の流れに対する損失を引き起こし、信号を減衰させます。特に高周波になると表皮効果によって抵抗値が増加するため、周波数に依存する要素として扱われることもあります。したがって、抵抗が高いほど信号の減衰が大きくなり、伝送距離が短くなります。送配電線や通信ケーブルでの効率にも直接影響を及ぼします。

3.2 インダクタンス(H/m)

インダクタンスの記号

インダクタンスは単位長さあたりの伝送線路が持つ自己インダクタンスと相互インダクタンスの合計を表す指標です。導体に流れる電流が磁場を生み出し、その磁場が再び電流に影響を与えます。

インダクタンスは信号の位相遅延や、伝送線路の特性インピーダンスに寄与します。インダクタンスが高いと、信号の反射や遅延が顕著になることがあります。キャパシタンスが高すぎる場合に回路に破損を与えたり、周囲に干渉電波を発生させたりするため、インダクタンスを高めて緩和したりします。

3.3 キャパシタンス(H/m)

キャパシタンスの記号

キャパシタンスは導体間に蓄えられる電荷の量を表す物理量です。線路の物理的構造や導体間の距離、絶縁体の誘電率によって決定する指標です。キャパシタンスはインダクタンスと同様に信号の遅延などの特性に影響を与えますが、インダクタンスとは逆に遅延を解消するように機能します。キャパシタンスが高いと、伝送線路は高い周波数の信号を伝送する能力を有しますが、同時に反射なども増加する可能性があります。そのため、キャパシタンスを適切に制御することは、信号品質を維持する上で重要です。また、キャパシタンスが上昇してしまった場合、共振現象によって回路が破損する可能性もあるため注意が必要です。

4.分布定数回路の書き方

分布定数回路は無線通信回路や長距離送配電回路を検討する際に、重要となる概念です。したがって、これらの分野で分布定数回路を記載しなければならない場合も多くあります。以下に分布定数回路を記載する際の注意事項を分かりやすく説明します。

4.1 分布定数回路の基本回路

分布定数回路の基本回路

電気回路は抵抗分、インダクタンス分、キャパシタンス分によって構成されることが多いです。分布定数回路はこれらが距離によって一定に配置されていると仮定した回路です。したがって、上記のような回路構成が分布定数回路の基本回路です。

回路上に抵抗分が設置されており、直列にインダクタンスが配置されます。この回路に並列にキャパシタンスが設置された回路です。なお、キャパシタンスには並列にコンダクタンスを配置することが多いですが、本回路では簡単のために省略しています。

抵抗分が大きいほど、電源から離れるに従って信号及び電力が減衰します。また、直列に配置したインダクタンスが大きい場合は、信号の移送遅延が発生します。キャパシタンスはこの移送遅延を緩和する要素です。

4.2 分布定数回路の簡略的な記載方法

分布定数回路の距離が長くなるほど、これらの素子要素を考慮すると計算が複雑化していきます。したがって、大きな系を検討する場合は、以下のように回路を簡略化して検討することも多いです。

分布定数回路の簡略的な記載方法

四角で書かれている部分がインピーダンス成分であり、距離に応じてインピーダンスが変化します。イッピーダンスは距離に応じて一様に変化するものとして設置されます。どの点で電流・電圧を取り出すかによってその値が異なり、複数点を比較・検討することが可能です。

簡略図を使うことで、回路の全体的な構造や動作の概要を素早く把握できます。設計の初期段階や概略設計において非常に便利です。簡略図は設計の方向性を決めるためのガイドラインとして機能し、複雑な設計を始める前に基本的な構造を理解するために使用されます。

また、簡略図を使うことで詳細な回路図を描く前に設計の方向性や基本的なパラメータを確定できるため、無駄な修正や変更を減らすことができます。これにより、設計にかかる時間とコストを削減でき、効率的な開発が可能です。

5.分布定数回路を描くためのフリーソフト

分布定数回路を描くことができるフリーソフトには、いくつかの種類があります。JwcadやLTspiceなどがその一例です。その中でも、特に注目したいのがEdrawMaxという図面作成ソフトです。EdrawMaxは効率性に図面を作成できる強力なツールであり、分布定数回路の作成においても多くの利点を有します。

分布定数回路の作成に役立つソフト

まず、EdrawMaxは回路設計向けに豊富なテンプレートを提供しています。高周波回路、伝送線路、その他の電気回路の図形が豊富に揃っており、分布定数回路を描くための基本的な構成要素を簡単に取り入れることができます。

さらに、作成した回路図は、PDFやJPEG、PNG、SVGなどの多くのフォーマットで出力できるため、設計の共有が容易です。プロジェクトチームやクライアントへのプレゼンテーションにも対応可能です。これにより、技術資料を踏まえたコミュニケーションが円滑となり、設計の手戻りなどが発生し辛くなる点が特徴です。

また、クラウド同期機能を搭載しており、インターネット経由で図面を管理することが可能です。自身で作成した回路記号やテンプレートを登録する機能も備わっており、効率性が一層高まります。

最後に、EdrawMaxは、AI機能を活用して図表作成の効率を向上させることが可能です。主に自動生成機能を提供しており、ユーザーが入力したテキストやプロンプトに基づいてイラストを瞬時に生成することができます。

テキストやプロンプトに基づいてイラストを瞬時に生成する

これにより、従来の手動での作図に比べて、迅速に作業を進めることができるようになります。データ分析にも対応しており、入力されたデータを基にパターンなどを予測する機能も有します。これにより、データを元にした意思決定が容易です。加えて、チャートを解析して潜在的なリスクや問題点を特定することもでき、作図や設計に役立つ予測を行えます。

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