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化学構造式を書くツール5選🧪

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編集者: Edraw

構造式は、分子モデリングや化学反応のシミュレーションの基礎として使用されます。化学構造式を描くことで、分子がどのように配置され、どのように反応するかを視覚的に理解できます。これは、有機化学の研究や新薬の開発などにおいて特に重要です。

この記事では、五つの構造式を書くツールについて、それぞれの長所短所をまとめました。また、構造式を書く時のFAQもまとめました。

Part 1: おすすめの構造式を書くツール5選

1.ChemDraw(ケムドロー)

ChemDraw(ケムドロー)

ChemDrawは、広く使用されている化学構造式描画ソフトウェアの一つです。高精度でプロな構造式を作成でき、特に有機化学分野において強力な機能を提供します。ChemDrawの最大の特徴は、化学構造の描画だけでなく、物理化学的性質の予測やNMRスペクトルのシミュレーションが可能な点です。

ChemDrawに関するより多くの情報: https://revvitysignals.com/products/research/chemdraw

日本語版の操作ガイド(近畿大学のHPより): https://kudos.kindai.ac.jp/cms/pdf/chemdraw_userguide.pdf

主要機能: 構造式描画、スペクトル予測、3Dモデリング、データ分析ツール

対応OS:Windows, macOS

おすすめの利用者: 大学研究者、プロの化学者、薬剤師

長所: 高度な分析機能、精度の高い構造描画

短所: 価格が高め、操作に慣れるまで時間がかかる

無料/有料: 有料(買取ライセンス26万〜 年間ライセンスが約10万〜、高等教育機関向け割引あり)

* ChemDraw 買取ライセンスの新規販売は、2024 年 12 月をもって終了となります。それ以降はサブスクリプションの年間ライセンスがのみご購入可能となります。(出典:https://www.hulinks.co.jp/software/chem/chembio/price)

2.EdrawMax

EdrawMax

EdrawMaxは、初心者から専門家まで誰でも簡単に使えるよう設計されています。基本機能には、化学構造を描くための専用ツールが含まれており、複雑な化学分子を簡単に表現できます。さらに、EdrawMaxは、png、jpeg、pdf、pptx、vsd、svg、epsなど、さまざまな形式での保存やエクスポートが可能です。これにより、研究レポート、プレゼンテーション、教育資料など、さまざまな分野で活用できます。

公式サイト: https://www.edrawsoft.com/jp/chemistry-equation.html

操作ガイド: https://www.edrawsoft.com/jp/guide/edrawmax/

主要機能: 化学構造図を含む様々な図面作成に対応するテンプレートを搭載、AIイラスト生成、レポート資料作成

無料/有料: 無料版、有料版(9800円/年)で高級機能を利用可能

おすすめの利用者: 学生、初心者

長所: 豊富な構造式のテンプレート、実験室の素材を搭載、AI機能で科学イラストを自動生成、フローチャート作成にも対応

短所:2Dの構造式のみ対応、化学分析に関する高度な機能が不足

EdrawMaxで構造式を書く方法

EdrawMaxでは、テンプレートを使用して簡単に構造式を描くことができます。以下は、テンプレートを使って構造式を作成する基本的な手順です。

1.プログラムを起動した後、上部の検索ボックスに「化学」と入力し、テンプレートを検索します。

構造式を書く手順:テンプレートを検索構造式を書く手順:テンプレートを選ぶ

2.左側のシンボルライブラリから他の化学記号や化学結合を選択して、構造式を完成させます。構造式を書く手順:化学記号や化学結合を選択

3.完成後、ファイルを保存するか、さまざまな形式でエクスポートすることができます。

構造式作成を完了

このように、EdrawMaxのテンプレート機能を活用することで、効率的に構造式を作成できます。

3.MolView

MolView

MolViewは、Webブラウザ上で動作する無料の化学構造式描画ツールで、簡単に使用できるインターフェースが特徴です。2Dの化学構造式描画と3Dモデリングの両方をサポートしており、特に学生や初心者に最適です。データベースから分子情報を簡単に検索でき、構造を視覚化できる点も魅力です。

公式サイト: https://molview.org/

操作ガイド: 公式サイトのナビで【MolView】→【help】にアクセスして確認可能です。

主要機能: 2D/3D描画、データベース連携、基本的な分子モデリング

対応OS:webブラウザーで利用可能なので、対応OSに制限なし

無料/有料: 無料

おすすめの利用者: 学生、初心者、教育機関

長所: 完全無料、シンプルで直感的な操作

短所: 高度な機能が不足、プロ用途には不十分

4.ChemDoodle

ChemDoodle

ChemDoodleは、デザインに優れた化学構造式描画ツールで、プロフェッショナルな化学者や研究者に適しています。デスクトップ版とWeb版があり、広範囲な描画機能を提供します。ChemDoodleは、美しい化学図の描画に特化しており、学術出版やプレゼンテーションに最適です。

公式サイト: https://www.chemdoodle.com/

操作ガイド: https://www.chemdoodle.com/resources

主要機能: 2D/3D描画、IUPAC命名法、スペクトル予測

対応OS: Windows, macOS, Linux

無料/有料: 有料($19/月間、追加機能のアップグレードあり)

おすすめの利用者: プロの化学者、教育機関、出版者

長所: 美しいデザイン、高いカスタマイズ性

短所: 無料版に機能制限あり、初心者にはやや難しい

5.MarvinSketch

MarvinSketch

MarvinSketchは、非常に多機能な化学構造式描画ツールで、特に反応式の描画や分子の物理化学特性の計算に強みを持っています。科学研究や薬物開発などの高度な分野に適しています。また、プラグインを使用してさらなる機能の拡張が可能です。

公式サイト: https://chemaxon.com/marvin

操作ガイド: https://chemaxon.com/blog

主要機能: 構造式描画、反応式描画、物理化学特性計算、3D描画

対応OS: Windows, macOS, Linux

無料/有料: 基本機能は無料、商用ライセンスあり(価格は用途による)

おすすめの利用者: 科学者、製薬業界、化学研究者

長所: 高度な機能、無料でも利用可能

短所: 高機能ゆえに学習コストが高い、プラグインのコストがかかる

Part 2: 化学構造式描画ツールの選び方

2.1 目的に応じた機能の選定

分子構造の描画のみが必要か、それともスペクトル解析や物理化学特性の計算が必要かを確認します。高度な機能が必要な場合はChemDrawやMarvinSketchを選択するとよいでしょう。

2.2 コストパフォーマンスの確認

予算を考慮し、無料ツールで十分な場合はEdrawMax、MolViewやMarvinSketchの無料版を検討。より多機能が必要であれば、ChemDoodleやChemDrawの有料ライセンスを考慮します。

2.3 操作性と学習曲線

初心者であれば、直感的なMolViewが適しています。プロフェッショナルな用途であれば、多少学習コストがかかるChemDrawやMarvinSketchでも価値があります。

Part 3 構造式を描く際のFAQ

Q1:構造式にはどのような3つのタイプがありますか?

A1:構造式には主に以下の3つのタイプがあります。

  1. 示性式(縮合構造式)
    分子中の原子の結合順序を表す構造式です。主に炭素骨格と官能基の位置を示すため、複雑な化合物でも簡略化されて表示されます。
  2. 電子式(ルイス構造式)
    原子間の共有結合や孤立電子対を「点」で表現する構造式です。電子の分布を詳しく示すため、分子の反応性や結合の強さを予測するのに役立ちます。
  3. 骨格構造式
    主に有機化合物で使われ、炭素原子を省略し、結合だけを示す簡略化された構造式です。複雑な化学式をすばやく書くことができ、分子の全体像を把握しやすくします。

Q2:構造式はどのように描かれますか?

A2:化学構造式を描く際の基本手順は以下の通りです。

  1. 原子の配置
    分子を構成する原子を順番に配置し、それらの間に結合を描きます。多くの場合、炭素が中心となり、他の原子(例えば水素や酸素)が結合します。
  2. 結合の表現
    単結合、二重結合、三重結合など、原子同士の結合を線で表現します。共有結合の場合、ルイス構造式で電子対を点で表すこともあります。
  3. 官能基や分子の細部追加
    反応性を示すために、官能基(ヒドロキシ基、カルボニル基など)を正確に配置し、全体の構造を完成させます。化学ソフトウェアを使用すると、これらの工程が自動化され、ミスを減らせます。

Q3.化学構造式を描く時の難しいところは?

分子の正確な配置と結合角度の調整

分子の結合角度や配置が手動で難しい場合がありますが、ツールは自動的に正確な結合角度を計算して配置してくれます。

官能基の配置ミス

官能基を手動で正確に配置するのは困難ですが、多くのツールには官能基のテンプレートが内蔵されており、クリックで簡単に追加可能です。

3D構造の可視化

2D構造から3Dモデルを作成するのは難しいですが、ツールを使えば2D描画から自動的に3D構造を生成し、立体的に確認できます。

分子の物理化学特性の計算

手動で物理化学的性質を計算するのは複雑ですが、ツールでは描画した構造から自動的にこれらの性質を計算して表示できます。

環状構造や多重結合を描く

手書きでは難しい複雑な環状構造や多重結合を描く際、ツールの自動補完機能で容易に描けます。

構造式の命名規則の理解不足

IUPAC命名法などのルールを手動で適用するのは難しいですが、ツールが自動的に構造に基づいて正しい名称を生成してくれます。

反応式の描画

化学反応を視覚化するのは困難ですが、多くのツールは反応物と生成物を簡単に配置し、矢印や条件を書き込む機能を提供しています。

分子の整列とレイアウトの調整

複数の分子を綺麗に整列させるのは手作業だと時間がかかりますが、ツールの整列機能で簡単に揃えることができます。

スペクトル解析データの生成

NMRやIRスペクトルを手動で予測するのは困難ですが、ツールでは分子構造に基づき自動的にスペクトルデータを生成できます。

異性体の描画

異性体(立体異性体など)の構造を描き分けるのは複雑ですが、ツールは異性体を自動生成し、それぞれの構造を簡単に描画可能です。

これらの難点は、専用の化学構造描画ツールを使用することで多くが解決可能です。

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