「状態遷移図とは何でしょう?メリットは?」「状態遷移表との違いは?」「状態遷移図の書き方を知りたい」そんな疑問を持っている方へ。
この記事では、状態遷移図とは何かについて、基礎知識から要素と記述方法を含む状態遷移図の書き方、そして事例まで、詳しい説明します。
1.状態遷移図とは?
1.1 定義
状態遷移図とは、システムやソフトウェアの状態とその間の遷移を視覚的に表現する図です。ステートマシンとも呼ばれ、オブジェクトがどのようなイベントで状態を変更するのか、遷移するために必要な条件(ガード条件)、そしてオブジェクトのライフサイクルにおける具体的なアクションも示すことができます。UMLの一種ですが、「静的な構造」を表すクラス図、シーケンス図などと違い、「動的な振る舞い」に焦点を当て、状態の変化と遷移を視覚化します。
例えば、自動販売機の動作を例に、待機状態からコイン投入、商品選択、商品提供までの流れを図解することで、開発者や設計者はシステムがどのように動作するかを容易に把握でき、問題発見や修正が効率的に行えます。
1.2 状態遷移図を使う目的
- システムの動作や挙動を理解しやすくする
- 設計や開発段階でのエラーや誤解を減らせる
- 異なるチームメンバー間で共通認識を持ちやすくなる
- システムの改良やデバッグの際にも役立つ
1.3 状態遷移図の長所短所
状態遷移図の大きなメリットは、ステート(状態)、イベント、トリガー、出口点、遷移挙動などの要素を一目でわかるように整理することができる点です。このため、システムやソフトウェアの動作を高度に理解し、設計や開発作業を円滑に進めることができます。
デメリットと言えば、①複雑なシステムでは作成が難しい②オブジェクト間の相互作用を表現できない(状態遷移図は個々のオブジェクトの状態変化を表現するため、複数のオブジェクト間のやり取りや協力関係を示すのには不向きです)が挙げられます。
1.4 状態遷移表との違い
状態遷移図と状態遷移表は密接に関連しています。状態遷移図が視覚的なツールであるのに対し、状態遷移表はマトリクスで状態(オブジェクト)や遷移条件(イベント)を一覧表示したものです。表形式で状態や遷移条件を一覧表示することで、どの条件でどの状態に遷移するかが一目でわかるようになり、開発中の不明点や誤解を減らすことができます。これにより、互いに補完し合ってシステムの状態や遷移条件を把握することが可能です。
状態遷移表の例
2.状態遷移図の要素と記述方法
状態遷移図を作成する際には、いくつかの基本的な要素とその記述方法を理解することが重要です。次は基本的な要素とその記述方法を説明していきます。
2.1 要素
まず、基本的な要素としては、「状態」「イベント」「遷移」「アクション」「トリガー」「出口点」があります。これらの要素は、システムの動作を視覚的に表現するための基本的な構成要素となります。
状態 | 状態とは、システムが特定の条件下で保持する一定の状態や状況のことで、円や長方形で表されます。状態は、初期状態や終了状態などの特定の状態も含め、システムのあらゆる状態を記述します。 |
イベント | イベントは、システムの状態を変化させる外部からの入力や出来事のことで、通常は矢印やラベルで表示されます。イベントが発生すると、システムは現在の状態から次の状態に遷移します。遷移先の状態は、イベントごとに異なる可能性があります。 |
遷移 | 遷移は、システムがある状態から別の状態に変化するプロセスのことです。これも矢印で示され、上にイベント名が書かれます。 |
アクション | アクションはイベントによって引き起こされる動作を意味し、遷移の途中に記述されることが一般的です。 |
トリガー | トリガーは、特定の条件が満たされたときに発生するイベントで、状態を遷移させる役割を果たします。 |
出口点 | 出口点は、システムが特定の状態から外れるポイントであり、終了状態や終了条件を示すために使用されます。 |
2.2 状態遷移図の記述方法(記号)
状態遷移図の基本的な記述方法としては、まずシステムの各状態を丸角長方形で明確にし、それぞれの状態間の遷移を示す矢印を描きます。その矢印にイベント名や条件を記述し、必要に応じてアクションも追加します。
3.状態遷移図の書き方
状態遷移図を書く際には、計画的な手順を踏むことで効果的な図を作成することができます。以下に、状態遷移図を書く基本的な手順を示します。状態は長方形で表現し、遷移は矢印で示します。
次に、自動販売機の状態遷移図を書く事例を使って説明します。
Step 1: 対象システムの理解と状態の特定
まずは、設計するシステムの全体像を把握し、どのような状態が存在するのかをリストアップします。各状態がシステム内でどのような役割を果たすのかを明確にすることが重要です。
自動販売機の基本的な状態を洗い出します。代表的な状態は以下です:
- 商品選択待ち状態
- コイン投入待ち状態
- 商品供給待ち状態
- 釣銭返却待ち状態
それぞれの状態を四角形で表現します。
Step 2: イベントとトリガーの定義
次に、状態が遷移する際に発生するイベントと、それを引き起こすトリガーを洗い出します。これにより、各状態間の遷移の条件がわかりやすくなります。
たとえば、商品選択待ち状態からコイン投入状態に遷移するのは「商品選択」、コイン投入待ち状態から商品供給待ち状態に遷移するのは「コイン投入」などです。
Step 3:遷移の記述
各状態間の遷移を具体的に記述し、どのイベントがどの状態からどの状態に変化させるかを明確にします。遷移が発生する際の条件やアクションもここで整理します。
「商品選択」という条件が満たされたら「コイン投入状態」に向かう矢印を描きます。同様に、各状態から各状態へ遷移する矢印を描いていきます。このプロセスにより、状態間の関係性が一目瞭然となります。
Step 4: レビューと改善
完成した状態遷移図を関係者と共有し、レビューを行います。その際の意見やフィードバックを元に、図を改善します。このプロセスは開発の成功に不可欠です。
以上のステップを踏むことで、状態遷移図を効果的に作成し、システムの設計や開発に役立てることができます。状態遷移図は、システムの全体像を明確にし、設計時の理解を深めるための重要なツールです。適切なツールを使いながら、事例に合わせて状態遷移図を描くことで、開発をスムーズに進めることができます。
4.状態遷移表の書き方
状態遷移表は、システムの状態やその変化を系統的に整理するためには非常に有用です。以下に、状態遷移表を書くときの基本的な手順をステップごとにまとめました。
Step1: システムの状態をリストアップ
まずは、設計するシステムやオブジェクトが取りうるすべての状態をリストアップします。
- 商品選択待ち状態
- コイン投入待ち状態
- 商品供給待ち状態
- 釣銭返却待ち状態
Step2: 遷移条件を明確にする
次に、各状態間の遷移条件を明確にします。具体的には、どのイベントや条件が発生すると次の状態に遷移するのかを定義します。例えば、「コイン投入投入」や「商品選択」などのイベントが該当します。
Step3: 状態遷移表のフォーマットを設定
状態遷移表のフォーマットは、一般的には行と列を使って状態と遷移条件を整理します。行には現在の状態、列にはイベントや条件を記載し、交差するセルに次の状態を記入します。
Step4: 遷移の詳細を記入
定義したフォーマットに合わせて、各状態とその遷移条件を具体的に記入していきます。この際、遷移に伴う動作やアクション(例えば、「商品提供」や「おつり計算」など)も併せて記載すると理解が深まります。
Step5: 表の検証と修正
完成した状態遷移表をシステム全体の文脈で再度見直し、矛盾や漏れがないかを確認します。設計チームや関係者と共有し、フィードバックを基に必要な修正を行います。
状態遷移表は、状態遷移図と組み合わせて使うことで視覚的にも体系的にもシステムの動きを理解しやすくなります。また、設計や開発の段階で状態遷移図や状態遷移表を用いることが効率的なプロセスを支援し、最終的なシステムの品質向上にも寄与します。
5.状態遷移テスト
上記の「レビューと改善」や「検証と修正」について、具体的な内容を補足します。
状態遷移図を作成した後、以下の点を確認します。
- 各状態遷移図に初期状態は1つだけあるか。
- 終端状態があるか。
- 各状態に少なくとも1つの出口があるか。
- 一つのイベントに複数のガードがある場合、それらが相互排斥しているか。
- 各状態が可能なイベント-ガードの組み合わせに対して1つの遷移のみ持つか。
- 冗長または重複する状態や遷移が削除されているか。
- すべての状態に到達可能か。
- 各状態および遷移に明確な名前がついているか。
- すべての可能な経路が有効で表現されているか。
6.状態遷移図の事例
下記の事例を利用したい場合、「EdrawMax」のテンプレートで検索してください。
ゲームアプリの状態遷移図
「製品ページでの購入」についての状態遷移図
アプリの状態遷移図
7.おススメの状態遷移図(表)作成ツール「EdrawMax」
状態遷移図や状態遷移表を作成する際には、適切なツールを使うことで作業が効率化されます。中でも「EdrawMax」はおすすめのツールです。
「EdrawMax」は、直感的なインターフェースを備えており、初心者でも簡単に状態遷移図や状態遷移表を作成することができます。多様なテンプレートや豊富なシンボルライブラリが用意されているため、特別なスキルがなくても美しい図や表を簡単に作成できます。
状態遷移図の作成において、EdrawMaxは以下のメリットがあります。
①チームのメンバーと一緒に状態遷移図の設計や修正を行うことができる
EdrawMaxは様々なファイル形式でのエクスポートが可能で、他のソフトウェアとの互換性も高いです。クラウド機能を使うことで、作成した状態遷移図や表をオンラインで管理し、どこからでもアクセスできるため、リモートワークでも実用的です。
②直感的なインターフェースが使いやすく、初心者でもすぐに状態遷移図を書ける
③豊富なテンプレートを活用することも可能です。
事例に合わせて状態遷移図(表)の書き方を素早くカスタマイズでき、設計する際の時間を大幅に節約できます。
④EdrawMaxはAI機能を具備していますので、プロンプトで「自動販売機の動作を状態遷移図にしてください」と入力すると以下のように自動で状態遷移表を生成することもできます。
総じて、「EdrawMax」は状態遷移図や状態遷移表の作成において、非常に有用なツールであり、その使いやすさと豊富な機能によって、プロジェクトの進行をスムーズにする大きな助けとなります。
8.状態遷移図に関するよくある質問
Q1 状態遷移図とフローチャートの違いは?
状態遷移図 | フローチャート | |
目的 | オブジェクトやシステムの「状態変化」を表現する | プロセスや業務手順の「流れ」を表現する |
要素 | 状態、遷移、イベント、条件 | 処理ステップ、分岐(条件) |
適用範囲 | 動的な振る舞いやライフサイクルのあるオブジェクトに適用 |
手順やロジックの流れを明確化する場面に適用 |
例 | 注文システムで「注文受付」「支払い確認」「発送済み」などの状態を経る変化を可視化 | 商品の注文手順や業務フローを視覚化 |
Q2 状態遷移図とuml図の関係は?
状態遷移図は、UMLの一種であり、「振る舞い図(Behavior Diagram)」に分類されます。
- 状態遷移図:オブジェクトやシステムの状態変化やライフサイクルを示す。
- クラス図:システムの静的な構造(属性や関係性)を示す。
- アクティビティ図:プロセスや業務フローを示す。
- シーケンス図:オブジェクト間のメッセージやインタラクションを示す。