ブレーンストーミングの際に、皆で意見を出し合い、それをカードや付箋などに書いてまとめてゆく手法を使うことがよくありますが、これが品質管理において親和図法(KJ法)と呼ばれている手法です。以下では、親和図法とは何か、どんな場面で活用できるのか、その進め方と注意点、他のQC道具と比べた特徴などについて説明します。
1. 親和図法とは?
親和図法とは新QC七つ道具の一つで,ある課題に対する事実・意見・発想などを言語データに変換し、言語データ同士の「親和性」を見つけて統合図を作っていく情報整理法です。
とりわけ、未来・将来・未知・未経験の問題のような、まだよくわからない、はっきりとしていいような問題について、問題の解決策を導き出す手法で、問題の親和性(似通っている、関係が強いなど)によって構造を整理することができます。
似た言語データ同士をまとめながら整理していくことによって、問題の全体像や構造のポイントを把握することが可能となり、取り組むべき課題が明確になります。簡単に言えば、言語データを似た者同士のグループにまとめて、問題点や解決策を導く方法ということです。
ブレーンストーミングの際に,多数の参加者から出された大量のアイデアを付箋やカードなどに記録し,共通性のあるものをグルーピングし,グループの特徴がよくわかる見出しをつけることによって,問題の構造あるいは思考プロセスを支援することができます.
この親和図法は、文化人類学者の故川喜田二郎氏が、フィールドワークで得たデータを新たな発想に変換するため1967年に考案した研究法が由来なので、品質管理の方面ではKJ法と呼ばれることもあるようです。
2.どんな場面で親和図法を活用できるのか?
親和図法は、いろいろな言語データがあって整理がつかないときや、取り組むべき課題が明確でないときなどに使います。整理するほどではない簡単な問題や、即決しなければならない問題の解決には親和図法は向いていません。問題を整理する必要があるときに使うのが親和図法なのです。
親和図法を活用できる場面は以下のようなものです。。
①アイデアの発想と整理
プロジェクトチームが新しいアイデアを発想し、整理する際に親和図法を用いて、異なる視点やアイデアを整理しやすくします。
②問題解決と課題の明確化
問題が複雑で明確になっていない場合、親和図法を使用して問題を分解し、その要因や関連する課題を整理して、効果的な解決策を導くことができます。
③要求事項の定義
新しい製品やサービスの開発プロジェクトにおいて、顧客の要求事項を整理・抽出する際に親和図法を適用することで、要求事項を明確にしやすくなります。
④プロセス改善
現行の業務プロセスやシステムの改善を図る際に、関係者が意見を出し合ってアイデアを整理する際に親和図法が役立ちます。
⑤プロジェクトマネジメントの合意形成
プロジェクトチームや関係者がプロジェクトの目標、スコープ、リスク、スケジュールなどに関する意見を統合し合意形成する際に親和図法を利用できます。
⑥ブレーンストーミングの補完
ブレーンストーミングのセッションで収集された多くのアイデアを整理し、グループで優先順位をつける際に親和図法を補完的に使用することがあります。
親和図法は、複雑な問題を整理し、アイデアをグループで効果的に整理する際に有用なツールであり、チームの協力や合意形成を促進します。
3.親和図法の進め方
元々は、カードや付箋を使って、多くの言語データを描きだす手法ですが、ここではオールインワン・ドローイングソフト Wondershare EdrawMaxを使用し、親和図法で「交通事故が起こる原因」を整理してみたいと思います。
①EdrawMaxを起動し、「新規作成」→「ビジネス」→「戦略と計画」の「親和図法」→「新規作成」をクリックします。
②白紙のキャンバスが表示されるので、「テキスト」をクリックして課題を表示します。
③左側の「リスト」からリストをドラッグ&ドロップします。
④EdrawMaxのAI機能を利用すれば、言語データのヒントが得られます。「AI」ボタンを押して、質問を送信します。
⑤AIの回答を参考に、カードに言語データを書き起こします。
⑥親和性の高いカード同士を同じグループに集め、見出しをつけます。同じグループを同じ色にするなどして、わかりやすく表示します。カードの枚数が多い場合には、グループ同士をさらにグルーピングして親和図を完成させます。
また、①の画面の下方に親和図法のテンプレートが表示されているので、これをクリックして表示させ、修正を加えることで親和図を作成することも可能です。
4.親和図法の注意点
新和図法には以下のデメリット、問題点があるので、採用する場合には注意が必要です。
①参加者に依存する
親和図法は、たくさんの意見を引き出す優れた手法ですが、参加したメンバーの状態、特性に大きく依存する傾向があるので、選んだメンバーが同じ考え方のメンバーの場合、同様なアイデアしか生まれません。
②時間、手間を要する
親和図法は、参加者が頭の中にあるアイデアや意見を出し合って、それを整理して、グループ化してまとめる手法です。作業自体はとても簡単なのですが、参加者を集める、参加者から出たアイデアや意見を付箋やカードに書き出す、そしてまとめるまでの一連の作業は、想像以上に手間と時間がかかります。時間の管理も必要になります。
③ 逸脱に対する許容
親和図法はアイデアの多様性を重視する手法です。参加者が異なる視点やアイデアを出しやすくするために、逸脱したアイデアや意見も受け入れる心構えが必要です。
④ 意見の尊重と公正さ
全ての参加者の意見やアイデアを尊重し、公平に扱うことが重要です。特定の意見やアイデアが抑えられたり、無視されたりしないように注意が必要です。
⑤主導者の役割と中立性:
主導者は適切な進行を確保する役割を果たしますが、中立で公正な立場を保つことが重要です。主導者の意見が強く反映されることなく、参加者の意見に焦点が当てられるべきです。
⑥フェーズごとの進行:
親和図法は複数のフェーズ(アイデア出し、カテゴリ化、優先順位付けなど)からなるプロセスです。各フェーズで適切な進行を確保し、手順を逸脱しないように注意が必要です。
⑦フィードバックと修正:
親和図法の進行中や後に、参加者からフィードバックを収集し、プロセスや結果に対する修正や改善を行います。フィードバックを活用して効果的な親和図法の実施に向けた改善を進めることが重要です。
5.他のQC管理道具と比べて、親和図法の特徴
親和図法は品質管理(Quality Control, QC)およびプロセス改善の手法の一つであり、他のQC管理道具と比較していくつかの特徴があります。
①アイデアの収集と整理に特化:
親和図法は、アイデアの収集と整理に特に焦点を当てた手法です。参加者が多様な視点からアイデアを出しやすくし、それらを整理・カテゴライズして意味のある情報を得ることが目的です。
②ブレーンストーミングの補完:
親和図法はブレーンストーミングなどのアイデア発想手法と組み合わせて使用することがあります。ブレーンストーミングで収集されたアイデアを整理する際に親和図法を活用することで、効果的にアイデアを整理することができます。
③視覚的な整理と可視化:
親和図法はカードやポストイットを用いてアイデアを視覚的に整理するため、参加者がアイデアの関連性や重要性を直感的に理解しやすくなります。視覚化された情報がグループの合意形成に役立ちます。
④グループ参加とコラボレーション:
親和図法は通常、グループで行われ、参加者全員がアイデアを出し合い、それらを共有し、合意形成するプロセスを重視します。コラボレーションとチームワークが鍵となる特徴です。
⑤顕在化されていない問題の抽出:
親和図法は、問題や課題がまだ明確に表れていない状況で効果的に活用される特徴があります。参加者が抱える異なる視点から問題を顕在化し、整理するのに適しています。
⑥グループの意見統合と優先順位付け:
親和図法はアイデアをカテゴライズし、重要度や優先順位をつけることによって、効果的な意見の統合と重要なアイデアの選択をサポートします。
これらの特徴により、親和図法はアイデアの収集・整理・カテゴリ化を重視し、グループの意見統合や問題の整理に効果的に利用されるQC管理道具となっています。
まとめ
ここでは、品質管理やブレーンストーミングで良く用いられる親和図法(KJ法)について、親和図法とは何か、どんな場面で活用できるのか、その進め方と注意点、他のQC道具と比べた特徴などについて説明し、オールインワン・ドローイングソフトWondershare EdrawMaxを使った親和図法の描き方についても説明しました。
紙のカードに書き込むのではなく、EdrawMax等のソフトを使えば、書き換えやグループ分けも簡単に行え、グループミーティングの貴重な時間を短縮することができます。是非使ってみてください。