勘定連絡図とは?基礎知識から作成まで完全解説工業簿記を学ぶのに欠かせない「勘定連絡図」。仕事に役立てたり簿記検定を取得してスキルアップしたりするために勘定連絡図を学ぼうとしている人も多いでしょう。
しかし商業簿記と違い工業簿記は流れが複雑なため、なかなか理解が難しいのも事実です。本記事では、「勘定連絡図」が何を示しているのかという基本的なことから、内容を理解して実際に作成するところまで解説します。
本記事を参考に勘定連絡図の書き方を知って、勘定連絡図を活用して工業簿記をマスターしましょう。
1.勘定連絡図とは
「勘定連絡図」とは「勘定」の「連絡図」、つまり工業簿記における原価計算の基となる勘定(お金の動きを記録するための区分)の流れを視覚的に表した図です。
(引用:フォーサイト)
上の図が勘定連絡図です。では、なぜこのような図が必要なのでしょうか。簿記の目的のひとつが「企業の経営成績(損益)を明らかにすること」ですが、そのためには「売上」と「原価」を知り利益(粗利)を計算する必要があります。
商業簿記と工業簿記の大きな違いは、「商品・製品にかかるコストの構成要素の多さ」です。例えば、同じ「バッグを1万円で売る」場合を考えてみましょう。商業簿記を使用する、セレクトショップのような小売業の場合、「原価=仕入原価」でありシンプルです。5,000円で仕入れて1万円で売れれば1個5,000円の利益です。
一方、工業簿記を使用する製造業において原価にはさまざまな費用が含まれます。バッグを製造すると仮定すると、ざっと挙げただけで以下のようなものがあります。
- 材料費
- 製造にあたった人件費
- 製造機械の減価償却費
- (何らかの加工を外部に委託する場合)外注費
- 工場の水道光熱費
製造業の場合、これらを計算して「製造原価」を出さないと「1万円で売ったバッグの利益はいくらなのか?」がわからないのです。
ほかにも商業簿記と工業簿記では違いがあります。
小売業の場合仕入れた商品はすべて同じ状態ですが、製造業の場合、「製品」となるまでにさまざまな状態があります。
- 材料(製造前の状態)
- 仕掛品(製造中のもの)
- 製品(完成したもの)
さらに違いはそれだけではありません。
工業簿記では、製品を製造するためのコストを「直接費」と「間接費」に分けます。直接費は製品の製造のために直接かかったコスト、間接費は複数の製品にまたがる間接的なコストです。
具体的に言うと、例えば特定のバッグを製造するときだけに使う金具やタグは確実に「どの製品の原価か」がわかるので直接費にあたります。しかし、水道光熱費や製造している人の給料は特定の製品ではなくすべての製品にかかっているので間接費となります。
製造業で使用される工業簿記の目的は、利益を計算するためにこのように複雑な製造プロセスから「製造原価」を算出することです。そのプロセスを図にしたのが「勘定連絡図」です。
2.勘定連絡図の構成
(引用:フォーサイト)
もう一度勘定連絡図を見てみましょう。製品の製造に関連して支払われた費用は「材料・賃金・経費」としてそれぞれ直接費と間接費に分けられます。
直接費はそのまま「仕掛品」に、間接費は「製造間接費」に振り替えられます。製造間接費はどの製品にどのくらいかかっているのかがわからないため、作業時間などを基準に「配賦額」として「仕掛品」に振り替える工程が必要です。
仕掛品にかかった直接費・間接費は完成しなかった分が「月末仕掛品」、完成した分が「完成品原価」として「製品」に振り替えられます。月内に完成したものがすべて月内に売れるわけではないので、月内に売れた製品分の原価が「売上原価」となります。
これでようやく「売上高」と「原価」が分かったので損益が計算できるようになりました。
3.勘定連絡図の覚え方
勘定連絡図は売上原価と売上から損益を出すための製造原価を算出するプロセスを図に表したものでした。勘定連絡図は、実際の製造プロセスの流れをイメージしながら見ると覚えやすくなります。では実際に、仕訳とともに勘定連絡図の流れを確認してみましょう。
まずは勘定連絡図の前、お金を支払った段階です。
①材料/賃金/経費の支払い
借方 | 貸方 | ||
材料 | ××× | 普通預金 | ××× |
賃金・経費も材料と同様に借方に記入します。
②材料/賃金/経費の使用
借方 | 貸方 | ||
仕掛品 | ××× | 材料 | ××× |
製造間接費 | ××× | 材料 | ××× |
直接費は「仕掛品」に、間接費は「製造間接費」勘定に振り替えます。
賃金・経費も材料と同様に借方に記入しましょう。
③製造間接費の仕掛品への配賦
借方 | 貸方 | ||
仕掛品 | ××× | 製造間接費 | ××× |
製造間接費の中から、「このくらいの割合がこの製品に使用されただろう」という額を算出して「仕掛品」勘定に配賦します。
④製品が完成したときの仕訳
借方 | 貸方 | ||
製品 | ××× | 仕掛品 | ××× |
完成した分を「製品」勘定に振り替えます。
⑤製品が売れた
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | ××× | 売上高 | ××× |
売上原価 | ××× | 製品 | ××× |
製品が売れるまでは売上原価にならないため、「売上原価」勘定に振り替えられるのは売れた段階です。
⑥損益の計算
借方 | 貸方 | ||
売上高 | ××× | 月次損益 | ××× |
月次損益 | ××× | 売上原価 | ××× |
このように、製造プロセスとともに勘定が勘定連絡図の流れで振り替えられているのがわかります。
4.勘定連絡図の書き方とコツ
勘定連絡図の流れを理解したところで、実際に勘定連絡図を書いてみましょう。今回は作図ツール「EdrawMax」を使った勘定連絡図の書き方を紹介します。下のテンプレートをダウンロードして、枠を移動したり、削除したりして連絡図を簡単に作成することができますよ。
4.1.「材料」「賃金」「経費」勘定を作成する
最初に、左側の材料/賃金/経費部分を作成します。「新規作成」から、「基本図」→「ブロック図」→「新規作成」ボタンをクリックします。
新規作成画面が表示されたら、まずは左上の「材料」勘定から作っていきましょう。
左側の「ライブラリ」には、ブロック図の作成に便利な基本図形や矢印、コネクタが表示されるのでドラッグ&ドロップで簡単に挿入できます。あわせて「図形」タブを開いておくと図形描画や編集に便利なツールが表示され便利です。
早速、今表示されているパーツの中から「線」「四角」を組み合わせて「材料」勘定を作っていきます。図形の線や色は図形を選択すると現れるツールバーで変更でき、図形をダブルクリックすると文字が入力可能です。
「材料」勘定ができたら、全体をコピーして文字を変更し、「賃金」経費、「経費」勘定も作成します。
これで勘定連絡図の左部分が完成です。
4.2.「製造間接費」勘定を作成する
次に、「間接費」の振り替え先である「製造間接費」を作成します。同様に、図形をコピーすると簡単に作成できます。流れをイメージしながら図形を動かしてみましょう。
間接費が集まり、「製造間接費」勘定に計上されました。
4.3.勘定同士を矢印でつなげる
「製造間接費」勘定ができたところで、次につながりを示す矢印を引いてみましょう。EdrawMaxなら簡単に作図できます。EdrawMaxでは、図形の枠上にある〇部分を選択し、青い色に変わったらドラッグすると図形から直接矢印が引けます。
実際に作図をおこなうと、作図に特化したEdrawMaxでは簡単に矢印が引けることに驚くでしょう。矢印の位置や方向もドラッグで簡単に調整できる上に、位置によって矢印同士が自動的に連結する機能も付いているので複雑な矢印でも自在に引くことが可能です。
4.4.残り部分を完成させる
基本的な作り方を一通り解説したので、同様に残りの部分も作ってみましょう。これでEdrawMaxを使用した勘定連絡図が完成です。
まとめ
今回はEdrawMaxを使用して、勘定連絡図を作図しながら製造原価を出すプロセスを学びました。EdrawMaxは直感的な操作と豊富なテンプレートが大きな特徴です。
EdrawMaxは作図に特化したソフトのため、複雑な図も短時間で作成できます。ExcelやPowerPointと比較して楽に作図ができることが実感できるでしょう。
今回使用した「ボックス図」以外にも、EdrawMaxにはガントチャートやフローチャートなど工程管理や業務マニュアル、資料の作成などの業務に役立つ多くのテンプレートがあります。
ぜひ一度、15日間無料体験できるEdrawMaxをダウンロードしてお試しください。