エコマップとは、社会的なネットワークや、人との相互の関係性を視覚的に表現するツールの一つです。主に社会福祉や心理社会的な支援の分野で使用され、特定の個人や家族を中心に据え、その周囲の関係者やシステムとのつながりを図や図表を使って示すことで、支援を必要とする人の状況や支援の範囲を理解するのに役立ちます。【関連記事: エコマップとジェノグラムの違いとは】
エコマップは個人や家族のサポートシステムを分析し、問題の把握や支援計画の策定、介入の評価をする際などに活用されます。また、ソーシャルワーカーやカウンセラー、支援提供者などが顧客との関係性を視覚的に理解するのにも使用されています。
その主なメリットを掲げると、以下となります。
①視覚的な表現 | 情報を視覚的に表現する手段で、関係者やネットワークのつながりを図や図表で示すことにより、複雑な関係性や状況を一目で理解しやすくすることができます。 |
②関係性の理解 | 支援提供者や専門家が、顧客と関係者の間の関係性やネットワークを理解するのに役立ち、サポートが必要な人の支援ニーズやリソースをより適切に把握できます。 |
③問題の可視化 | 問題や課題を視覚的に提示し、関係者やシステムの影響を明確にすることで、問題の原因や背後にある要因を特定しやすくなります。 |
④支援計画の策定 | 支援計画を策定する際に、関係者やリソースを把握することで、適切な支援策や介入方法を検討しやすくなります。 |
⑤コミュニケーションの促進 | 関係者の視覚的な表現を通じて、意見や希望を共有しやすくなり、コミュニケーションを深めるのに役立ちます。 |
⑥プランニングと評価 | 変化や進展を視覚的に追うことで、プランの適宜の修正や調整が可能となり、介入の効果を評価するのに役立ちます。 |
⑦顧客の意欲向上 | 顧客が自身のネットワークや関係性をマップ上に表現することは、自身の状況を整理し、自己理解を深める機会となり、自己認識や意欲を高めるのに寄与します。 |
これらのメリットにより、エコマップは個人や家族のサポート、ソーシャルワーク、カウンセリング、コミュニティ支援など、さまざまな分野で活用されています。
1. エコマップの記号
エコマップの記号には色々な書き方がありますが、ここでは一般的な例を示します。
(1)人の記号
①性別と年齢:男性は四角、女性は丸、性別不明は三角で表します。年齢は記号の中に表す方法や、図形の下に記入する方法があります。
②中心人物(顧客):二重線で囲います。
③生死等:死亡者は記号の中を黒く塗りつぶしたり、バツ印をつけたりします。女性が妊娠している場合は三角形を書き込みます。
(2)婚姻・親子関係等の記号
①結婚:夫と妻の記号を横線でつなぐことで、結婚していることを表します。
②子ども:実線をぶら下げ、先端に記号をつけます。兄弟、姉妹がいる場合には、横並びでつなげていきます。
③離婚:横線の上から斜線を引きます。二重の斜線を離婚、一重の斜線を別居というふううに表すこともあります。
④同棲:波線を引いてつなげます。
⑤再婚:相手の記号を横につなげていきます。
⑥同居:同居している人の記号を線で囲んで表現します。
(3)人間関係
中心人物との関係によって、線の表記を変えて描きます。家族や機関等のグループは、囲んで示します。
2. エコマップの作成手順
オールインワン・ドローイングソフトWondershare EdrawMaxを使えば、誰でも簡単にエコマップを作成することができます。EdrawMaxを使って、ある老婦人のエコマップを作成してみましょう。
①作成開始:「新規作成」→「科学」→「ジェノグラム」を選択します。
②関係者の配置:新しいシートが表示されるので、左側の「ライブラリ」から関係者の「図形(〇、△等)」をキャンバスにドラッグ&ドロップして関係者を配置し、年齢を記入します。
③婚姻・親子関係等の記入:ライブラリの下の方にある「線」をドラッグ&ドロップして婚姻・親子関係等を記入します。
④人間関係の記入:さらに線を加えて人間関係を作成します。その際、描画ツールを使用して、線の塗りつぶし、テキスト、線のスタイル、矢印のスタイルなど、さまざまな機能が使用できます。
⑤着色等、見映えを整えて完成です。
⑥一から作成するのが億劫な場合は、用意されているテンプレートから適宜選択して修正を加えることも可能です。
(編集可能なeddxファイルですので、事前にedrawmaxをダウンロードして開いてください)
⑦「Edraw AI」の活用:キャンバス右隅に表示されるAIボタンを押すとAIとの通信が可能になり、適宜質問をすることも可能です。
3. エコマップの書き方に関するよくある質問
3.1エコマップを作成するためのツールは?
ご紹介したWondershare EdrawMax 以外にも、エコマップを作製できるツールはいくつかあります。以下ではMicrosoft Word及び「エコマップメーカー」を紹介します。
(1) Microsoft Word
Wordは主にテキスト処理と文書作成を目的としたソフトウェアですが、描画やグラフィックスの作成にも一部の機能が備わっています。しかしながら、Wordを使用してエコマップを描く際には以下のような問題点が考えられます。
①使用できる基本図形が少ない:
Wordで使用できる基本図形は限定されていて、複雑なシンボルについては自分で作成し、登録しておく必要があります。
②微妙な位置調整ができない:
図形の大きさや配置も文字単位が基本になるため、微妙な大きさや配置の調整ができません。
③画像挿入の処理が面倒:
画像を挿入すると、そのままでは画像を自由に動かすことができず、「文字列の折り返し」を選び、「背面」 または「前面」に設定する必要があります。
④ファイルの編集と互換性:
Word文書内の描画は、テキストやレイアウトと一緒に保存されるため、ファイルサイズが大きくなる可能性があります。また、Wordからエクスポートして、それ以外のソフトウェアで編集や表示を行う場合にも、互換性の問題が生じることがあります。
(2)エコマップメーカー
オンラインのエコマップ専用ツールで、テンプレートも多数用意されています。
左側のライブラリから関係者の図形をドラッグアンドドロップして配置し、線を選んで線の種類を変更しますが、図形も線も単純なものしか用意されていないようです。
無料でも使用できますが、その場合は、キャンパスやアイテムの数、出力項目などに制限があります。
3.2忘れてはいけないエコマップの要素は?
エコマップを作成する際には、特定の要素を含むことで情報をわかりやすく表現することが重要です。以下に、忘れてはいけないエコマップの要素をいくつか挙げてみましょう。
①顧客または家族:エコマップの中心には、支援を必要とする個人や家族の名前を記入します。これがマップの焦点となります。
②関係者:顧客や家族と関わる人々や組織を示します。友人、家族、専門家、教師、医師、支援者などが含まれます。
③線やライン:関係者とのつながりを表現するために線やラインを使用し、関係性の強さや性質を示すことがあります。
④関係性の質:関係者との関係性の質や性質を示します。例えば、信頼関係、サポート、衝突、協力などを示すことがあります。
⑤関係性の強さ:関係者との関係の強さや頻度を示すことができます。太い線や色分けなどで表現することがあります。
⑥リソース:顧客や家族が持つリソースを示します。経済的、社会的、精神的なリソースなどが含まれます。
⑦ニーズ:顧客や家族が抱えるニーズや課題を示します。サポートが必要な領域を特定するのに役立ちます。
⑧変更や進展::エコマップは変化する関係性を反映するために更新されることがあります。新たな関係者の追加や変更、進展を記録することが重要です。
⑨説明や注釈:エコマップ上での要素や線の意味を説明するための注釈やキーワードを加えることがあります。
⑩顧客の意向:顧客の意向や目標をマップに反映することで、支援計画の策定や目標設定に役立ちます。
これらの要素を含むことで、エコマップは関係性や状況をわかりやすく表現し、サポートプランの策定や介入の評価に活用できる有用なツールとなります。
3.3介護現場以外でもエコマップを活用できるでしょうか?
エコマップは介護現場以外でもさまざまな場面で活用されます。以下にその主な事例をいくつか挙げます。
①ソーシャルワーク:ソーシャルワーカーや支援提供者は、顧客や家族の社会的ネットワークを理解し、サポート計画を立案する際にエコマップを使用します。顧客のリソースや関係性を可視化し、適切な支援を提供するための基盤を築くのに役立ちます。
②カウンセリング:カウンセラーやセラピストは、顧客の状況や関係性を把握し、問題解決や成長を支援するためにエコマップを利用します。顧客自身が自分の関係性を見つめる機会を提供し、セラピーの目標設定や進捗の評価にも活用されます。
③家族支援:家族カウンセリングや家族サポートの分野では、家族内の関係性やコミュニケーションパターンを理解し、改善するためのアプローチを見つけるのに、エコマップが用いられます。
④コミュニティ支援:コミュニティセンターや地域支援プログラムでは、地域内の資源や支援ネットワークを可視化し、地域の強化や課題解決を図るためにエコマップが利用されます。
⑤教育:学校や教育機関では、生徒や学生の支援体制を理解し、学習上のニーズや課題に対応するためにエコマップを使用することがあります。
⑥移民や難民支援:移民や難民の支援プロセスを理解し、新しい環境での適応をサポートするためにエコマップが用いられます。
まとめ
ここではエコマップとは何か、そのメリットは何か等を説明し、その具体的な事例とソフト等を利用した作成方法をご説明しました。 エコマップを使えば、個人や家族のサポートシステムを分析し、問題の把握や支援計画の策定、介入の評価を行うことができます。
エコマップを作成する際、オールインワン・ドローイングソフトWondershare EdrawMax を使えば、テンプレートもたくさん用意されていて、誰でも簡単にエコマップをビジュアルに作成することができます。無料試用版はエクスポートしたファイルに透かしが入るという制限がありますが、15日間無料試用が可能です。是非一度お試しください。