問題の原因を特定したり、改善策などを見つけたりしたい場合に有効な手段が「ロジックツリー」です。これは、起きている問題の要素を書き出して図に落とし込むことにより、体系的に全体を捉えられる思考方法で、ロジックツリーを活用すれば、物事の全体構造やメカニズムを把握し、問題解決に活かすことができるようになります。
この記事では、ロジックツリーとは何かについて、種類、メリット、そして作り方も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。
- 目次 -
Part 1: ロジックツリーとは?
1.1 ロジックツリーとは何?
ロジックツリーとはロジカルシンキングの手法のひとつで、一言で表すと「物事を整理して考える手法」のことです。ロジックツリーでは、問題や課題を要素ごとにひとつひとつ分解し、木が枝分かれするような「階層構造」に整理して図に落とし込みます。これにより全体像や因果関係を可視化し、問題の要因や発生点を速やかに把握できます。
複雑で全体をつかみきれない問題や、どこから手をつければいいかわからない課題があったとしても、小さな要素に分解していくロジックツリーなら論理的に要素を洗い出せ、本質的な原因を理解し、解決の糸口を見つけることができるようになります。
1.2 ロジックツリーとピラミッドテクスチャーの違いは?
ロジックツリーによく似ているものに「ピラミッドテクスチャー」があります。どちらもツリー構造で記述するので同じように見えますが、用途や記述スタイルは明確な違いがあります。
• ロジックツリー
ロジックツリーは、主に「検討・思考」のために用いられる方法で、問題や課題を要素で細かく分け、物事を考え易いように整理していきます。ロジックツリーの記述スタイルは、下図のように大本の問題や課題を左端に記述し、右に向かって要素を展開します。
• ピラミッドテクスチャー
ピラミッドストラクチャーは、主に「説明・説得」のために用いられる方法で、結論や主張の正しさを証明するために根拠を構造的に表していきます。ピラミッドストラクチャーの記述スタイルは、下図のように結論や主張を頂点にし、その根拠を構造的に配置します。
1.3 ロジックツリーの用途
ロジックツリーは応用の幅が広い手法です。これまで説明してきたように、ロジックツリーは主に課題を解決するようなシーンで活躍します。たとえば、「顧客の来店数が減少している」という問題があれば、これに対する原因を書き出していくことにより、根本原因を整理して解決策に導けるでしょう。これ以外にも、戦略や戦術を作るシーンや分類や分析といったシーンにも応用できます。たとえば、売上向上に対するアクションプランの作成、社用車の選定などもロジックツリーで導くことができます。
Part 2: ロジックツリーの種類
ロジックツリーは物事を整理する目的によって作成するツリーの種類が異なります。どれもツリーの形状は同じですが、観点や思考のやり方が異なってくるため、目的に応じて適切なタイプのツリーで作成する必要があります。
• Whatツリー(要素分解ツリー)
ある事柄や物事を構成する要素を把握・整理するために作成するのが「Whatツリー」です。 「何(What)がそれを構成しているか」という観点から、その構成要素を分解して整理していきます。つまり、段階的に要素を分解して可視化するので、全体の構造を把握するのに役立ちます。また、書き出した要素を比較したり、個別に検討したりするといった活用もできます。
Whatツリーを作成する場合、起きている問題を左項に書き出し、その問題を構成する要素を右方向に書き出していきます。下図は「商品販売数の減少」に対し、カテゴリーやアイテム別の販売数を整理したロジックツリーです。全体の販売数を可視化できるので、どのカテゴリーのどのアイテムで販売数の減少が起きているのかを特定できます。
このように、Whatツリーは要素を分解していくロジックツリーなので、選択肢を洗い出すようなシーンに応用できます。
Whatツリーの各要素の末尾に「〜が低い」といった文言を加えるとWhyツリー、「〜を改善する」といった文言を加えるとHowツリーの形にできるので、Whatツリーはロジックツリーの基本形ともいえるでしょう。
• Whyツリー(原因追及ツリー)
発生した問題の原因を追究するために作成するのが「Whyツリー」です。
問題や課題に対して「なぜ(Why)問題が起きているか」という観点から、生じている問題の原因を考えつくだけ書き出し、整理していきます。
問題の原因は1つとは限りません。ロジックツリーを使ってあらゆる原因を書き出すことにより、解決したい問題がどの原因に相当するのか照らし合わせることができます。これにより、問題が深掘りされ、解決方法を考えるのに役立ちます。
Whyツリーを作成する場合、起きている根本的な問題を左項に書き出し、その問題が発生する原因を右方向に書き出していきます。下図は「営業利益の減少」に対する原因を書き出したロジックツリーです。因果関係がある原因を書き出していくことにより、どのような問題が起きているかが明確になっています。
• Howツリー(問題解決ツリー)
特定の問題や課題を解決する場合に作成するのが「Howツリー」です。
問題や課題に対して「どうすれば(How)解決できるか」という観点から、想定できる解決策を書き出していきます。真の解決策に導くには、すぐに思いつく解決方法を書くだけではなく、他に解決策はないのか考えて深掘りしていくことが重要です。
Howツリーを作成する場合、解決したい根本的問題を左項に書き出し、その問題を解決する策を右方向に書き出していきます。下図は「サイトの訪問者数を増やす」ために考えられる解決策を書き出したロジックツリーです。なお、Howツリーは、前述のWhyツリーと照らし合わせてつくると効率的に解決策を見出せます。
• KPIツリー
目標を達成するために作成するのが「KPIツリー」です。
KPIツリーはHowツリーに細かい目標・指標を追加したもので、主にHowツリーの派生として作成されます。
KPIツリーを作成するときは、Howツリーで洗い出された具体的なアクションに対して数値を紐付けます。これにより、目標がより具体的になり、目標に対しての行動や達成率などを管理できるようになります。
Part 3: ロジックツリーを使うメリット
問題を解決するためには、ロジックツリーは非常に有用な手段です。どのようなメリットがあるか具体的に紹介していきましょう。
■可視化することにより全体像を把握
ロジックツリーを作成すると、現状の全体像を可視化できるので、どのような状態にあるのかを明確に把握できます。理想の全体像との比較を行えば、どこに問題が起きているのかを含め、問題や課題を見つけやすくなります。
■論点のズレを防止
メンバー間で議論を行う際に重要になってくるのが論点です。論点が噛み合わないと、実のある議論が行えません。ロジックツリーを作成しておくと、問題を含めて全体像が可視化されているのでメンバー間で論点や現状認識などの情報共有が容易になります。したがって、今は何について議論しているのかが明確になり、「人によって違う話をしている」といった論点のズレを防止できます。
■適切な選択肢に気付ける
ロジックツリーは想定できる要素をすべて書き出して深掘りするので、頭の中で考えていたときに気付かなかったポイントまで考察がおよびます。適切に因果関係を書き出していけば、仮説と検証を実施することになるので、状況を網羅的に整理できます。
■優先度を決めやすい
解決策を考える際、ロジックツリーならそれぞれの要素に対して解決策を書き出して俯瞰することができます。これにより、問題の大小も明確になるので、「どこから取りかかればよいか」といった優先順位が付けやすくなります。
■解決策の必要性を共有しやすい
解決策だけをメンバーに伝えても、「なぜその解決策なのか?」といったように、相手に趣旨が伝わらないことがあります。ロジックツリーを作成していれば、その解決策に至った経緯などがひと目でわかるので、解決策の必要性を共有しやすくなります。
Part 4: ロジックツリーを作成ための注意点とコツ
ロジックツリーを作る際、むやみやたらに要素を書き出しても実のあるものになりません。具体的な解決策や改善策に落とし込むものを作成するには、次のようなポイントを押さえておいたほうがいいでしょう。
■問題の定義を明確にする
ロジックツリーを作成する前に「何が問題なのか」を定義することが重要です。問題の定義があいまいだと分解した要素もあいまいになり、ロジックツリー自体に意味が見出せません。
つまり、問題の定義とは「問題の核心的な内容」を明らかにする作業ですので、ここをしっかりと明確にすることが重要です。
■MECEで要素を分解する
ロジックツリーで要素を分解する場合、「MECE」という方法を意識して分解していくことが最も重要です。MECEとは、「Mutually」(相互に)「Exclusive」(重複せず)「Collectively」(全体として)「Exhaustive」(漏れがない)、の頭文字をとった用語で、その名の通り「漏れなく、ダブりなく」を条件にして要素を分解していきます。
■適切な切り口で分解する
分解するときに重要なのが「切り口」(分解の仕方)です。たとえば来店する顧客は「男性と女性」「会員と非会員」「新規とリピーター」のような切り口で分けることができます。ここで新規顧客の契約数についてのロジックツリーを作成する場合、切り口を「男性と女性」にしてもあまり意味はなく、「新規とリピーター」を切り口にして分解していくべきでしょう。このように、適切な切り口で分解することが必須です。
■仮説的な思考法で分解する
要素で「漏れ」をなくすようにするには「仮説的な思考法」が有効です。これは、「おそらくこうなるかな」と先を見通していく思考方法のことで、ツリーに書き出した限られた情報から最も確からしい「仮の答え」を思いつくまま先に書き出していきます。仮説がある程度出尽くしたら、要素を整理しながら仮説の整合性を検証していきます。この際に左の項は右の項を総合したものであることを原則として検証すると、漏れや論点のズレを防ぐことができます。
■同じ階層の要素は水準を揃える
要素を分解していくとツリーは階層構造になりますが、同じ階層に置かれた要素は同程度の水準に揃えられていることを確認します。もし、水準に隔たりがある要素が同じ階層に並んでしまうと、要素が比較検討の対象にならない上、ツリー全体の階層構造が崩れてしまうため、非常に見通しの悪いものになります。
■具体的な行動や解決策まで落とし込む
ロジックツリーの目的は解決策を見つけることにあるので、ツリーの終端は具体的な行動や解決策になるまで落とし込むことが必要です。なお、ロジックツリーは基本的に5階層以上まで掘り下げると、より良い分析が可能になると言われています。
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Part 5: まとめ
ロジックツリーは、複雑な問題をシンプルな図に落とし込むことにより、体系的に全体を捉えることができる思考法です。問題の根本的な原因を特定し、改善策などを見つけるのに有効で、問題解決以外にも多くのシーンでの応用が可能です。最初のうちはロジックツリーの作成が難しいと感じるかもしれません。しかし、今回紹介したようなコツを押さえていけば、スムーズに作成できるようになるでしょう。