P&ID 知識

フローシートとは?実例と書き方を紹介

edraw編集者
編集者: Edraw

製造現場などにおいて、フローシートという図面を使用することがあります。特に化学プラントなどのプロセス系工場では重要な図面であり、シートを読み書きできるか否かで仕事に携われる幅が大きく違います。本記事では、フローシートの定義や描き方について分かりやすく、かつ詳しく紹介します。

1.フローシートとは?

フローシートとは

引用元:https://www.edrawsoft.com/edrawmax-templates/jp/1047215/

フローシートとは、プロセスの動作を視覚的に表現する図面です。プロセスフローなどとも呼ばれます。転じて、システムや手順を図示した図もフローシートと呼ばれることがあります。

製造業や化学工業で使用されることが多く、工程の流れや各ステップの相互関係を図示します。プロセスを理解しやすくするために各工程をシンボルや矢印で繋げ、物質やエネルギーの流れを示します。フローシートを基に、原料や製品及び廃棄物のバランスを確認するためのマテリアルバランスシートや、これらを工業プロセスとして成立させるためのP&IDなどの図面を作り込んでいきます。

2.ローシートはどんな時に使われる?

フローシートは以下のような用途で使用されることが多いです。

2.1 新規プロセスの立ち上げ

新しい生産ラインを設計する際、フローシートによってプロセスの流れを視覚的に示すために作成します。生産プロセスは多くの場合、様々な関係者を巻き込んでプロジェクトを進める必要があります。フローシートによって各関係者が複雑なプロセスを簡潔に理解できるため、設計段階での意思決定がしやすくなります。

2.2 新人教育

新しい従業員に対して製造プロセスの概要を説明する際、フローシートによって理解を助けることができます。特に複雑なシステムや大規模で全容を見渡せない場合、設備を視覚的追いかけて見せることで、理解を深めることが可能です。

2.3 運転監視

一般的な生産プロセスでは、フローシートを基に運転監視装置を作成します。上記のような監視装置があれば各工程の流れを視覚的に確認することができ、オペレータがリアルタイムでシステム全体の動作を理解しやすくなります。異常が発生した場合にはフローシートに沿って問題の発生場所や原因を迅速に特定することが可能です。

3.フローシートの描き方

製造現場で働くエンジニアは、フローシートを描かなければならない場面も多いです。本記事ではフローシートの描き方を、EdrawMaxを使用して紹介します。

Step1 原料・製品・廃棄物の明確化

はじめに、フローによって製造する製品からプロセスの種類を明確にします。プロセスが確立したら、必要となる原料や発生する廃棄物を確認して記載します。これにより、どのような設備を導入する必要があるかを検討する初期段階となります。

フローシートの場合、原料・廃棄物・製品は矢印で記載することが多いです。EdrawMaxを使用している場合、図形のタブで検索することで、簡単に矢印ブロックを見つけることができます。

原料・製品・廃棄物の明確化

Step2 主要設備の記載

 主要設備の記載

次に、本プロセスの核となる主要設備を記入していきます。本製品の製造に知見のあるサプライヤーへ製品の製造速度やパラメータを伝えることで、必要となる設備を共に検討してもらうことも多いです。同一の製品でも必要な量や精製精度によって、必要な設備が異なることも少なくありません。また、複数の設備を組み合わせて、必要な精製精度を達成することもあります。この段階で必要な原料や発生する廃棄物が増えることも多いです。必要に応じてこれらを書き加えていきます。

Step3 整合性の確認・付帯設備の記入

整合性の確認・付帯設備の記入

一般的な化学プロセスにおいては、主要設備を導入するだけでは既設設備との取り合いが成り立たないことも多いです。バッファータンクや払い出し装置及びポンプ・ファンが追加で必要となることも少なくありません。設置予定地を十分に事前調査し、プロセス全体が現実に即して整合性が取れていることを確認することが非常に重要です。整合性が取れていない場合、必要となる付帯設備を付け足していきます。

EdrawMaxを使用している場合、多くの種類の図面記号がプリセットされています。図形の検索に「タンク」や「ポンプ」などと検索するだけで、図面記号を簡単にドロップして記入することができます。

4.フローシートを描く時の注意点

フローシートを描く時にはいくつか注意すべき観点が存在します。以下にそれらの一例を紹介します。

4.1 一貫した記号を使用する

一貫した記号を使用する

フローシートを作成する際は、デザインが一貫した記号を使用することが重要です。作図ソフトに多くの記号がプリセットで登録されている場合でも、着色仕様が異なる記号や立体・平面記号を複合して使用すると、フローを見た人が理解しにくくなってしまう場合があります。シンボルの意味を統一し、混乱を避けることが大切です。

4.2 フローの順序を明確にする

フローの順序を明確にする

フローシートは工程の順序を守って描く必要があります。フローがどの順番で進行するのかを明確に示し、矢印で進行方向を示すことで、工程の流れを分かりやすくすることが重要です。一般的には左上に原料を示し、下に向かって製品・廃棄物を記載すると分かりやすいです。

4.3 関係者への相談

フローシートを作成した際は、実際にプロセスを運用するオペレーターやエンジニアからフィードバックをもらい、十分に相談することが重要です。これにより、実際の運用に即したプロセスに修正することができます。現場の知識を反映させることで、さらに有用なフローに仕上げることができます。

5.フローシートの事例とテンプレート

上記で紹介したEdrawMaxでは、フローシートのテンプレートが多く内蔵されています。以下に有用なフローシートのテンプレートや事例を紹介します。

5.1 トウモロコシによるエタノール精製プロセス

フローシートの事例1.トウモロコシによるエタノール精製プロセス

上記はトウモロコシによるエタノール精製プロセスです。最初にトウモロコシの粒を粉砕して細かく砕き、酵素を使用してデンプンを単糖に分解します。糖化された液体に酵母を加えて発酵を促進し、エタノールに変換します。発酵後、エタノールと二酸化炭素が生成された液体を蒸留によって分離します。フローを分かりやすく説明した、お手本となるフローシートです。

5.2 廃棄物焼却プロセス

フローシートの事例2.廃棄物焼却プロセス

立体のプロセスについて参考が必要な場合、上記のテンプレートがお手本となります。廃棄物を燃焼炉で加熱し、ボイラーなどを使用して熱などのエネルギーとして回収するプロセスです。廃棄物をコンベアなどで供給した後に、ストーカー炉などの燃焼炉で燃焼させます。その際に発生する熱をボイラーで回収することで、廃棄物を有効活用することが可能です。燃焼排気には煤塵などが多く含まれているため、袋式集塵装置(バグフィルタ)などで集塵した後に煙突から排出します。ごみ処理プロセスを分かりやすく説明したテンプレートです。

6.フローシートに関するよくある質問

6.1 フローシートとフローチャートの相違点とは?

フローシートと似た言葉にフローチャートが存在します。

フローチャートの例

上記はフローチャートの一例です。フローチャートは、プロセスのステップや手順などについて順を追って示す図で、業務プロセスやアルゴリズム及び意思決定の流れを視覚化する際に使用されます。

それに対して、フローシートは工業プロセスや製造工程の流れを視覚的に表す図です。物質やエネルギーの移動および処理などを示します。特にプロセスの詳細な構造や設備間の流れを示すために使用されます。

下記に表にまとめます。

項目 フローチャート フローシート
概要 プロセスのステップや手順などについて順を追って示す図 工業プロセスや製造工程の流れを視覚的に表す図
使用場面 業務プロセスやアルゴリズム及び意思決定の流れを視覚化する場合 プロセスの詳細な構造や設備間の流れを示す場合
業界 ソフトウェア開発、ビジネス全般 製造業、化学工業、エネルギー産業

6.2 フローシートを作成するには、国際的な規格・仕様がありますか?

フローシートにはいくつかの国際的な規格が存在しますが、ISO 10628:2012などが一般的に使用されます。ISO 10628は、化学工業や関連する工業分野におけるプロセス設計に関するフローシートの作成についての国際的な規格です。その他にはDINやASME、JISなどでも定められています。ただし、使用場所や場面によってこれらの規格・仕様は異なるため、初めに準拠すべき規格を確定させることが重要です。

関連記事