矩計図は建築工事における各種図面の1種であり、工事の詳細な仕様や寸法などを知るために必要な図面です。
詳細を書き出す図面であるため、材料の知識や適切な寸法表記、矩計図特有の図面表記などを正しく理解しておく必要があります。この図面表記の間違いは、建築物の完成に大きく影響してくるため、小さなミスも許されないものとなっています。
そこで、今回の記事では矩計図とはどんな図面で、その読み方・書き方、凡例や専門用語について詳しく解説していきます。
矩計図とはどんな図面?
(引用:日本大学工学部)
矩計図とは、建物を垂直に切断したときの切断面を表した断面図のひとつです。建物の基礎の部分から、各階の部屋の床や天井の壁の中などさまざまな情報が詰まった図面です。
室内空間の高さや天井裏、小屋裏の寸法などの普段見ることのない部分の寸法の表記も行います。
図面の縮尺としては、50分の1から20分の1が多く、特に住宅などでは、30分の1の縮尺を用います。これは矩計図の詳細図としての役割から細かい寸法や情報が必要なためです。
構造、仕様、使用材料など正しく、適切な建築知識がなければ書くことができない図面であるため、より多くの建築知識を必要とします。
矩計図は建築物の完成や、施工業者への正しい情報の伝達のために重要な役割を果たす図面といえます。
矩計図の読み方:符号、凡例と専門用語
矩計図は断面詳細図と同じ意味で使われる図面であり、建物の断面を詳細に表していく図面であるため、平面図などとは違った読み方や符号、凡例などを使用します。
矩計図は基礎から屋根組までの外壁壁を含む断面を書いていきます。専門用語も部分的にでてきますので、部位ごとに詳しく解説していきます。
・基礎
基礎部分について重要になってくるのは基礎の断面形状、根入れ深さなど直接施工に関わる部分の寸法などを書いていくことです。
基礎は砕石を敷いて、捨てコンクリートを打設し、基礎コンクリートを打設するため、それぞれに区別した表記が必要となってきます。
鉄筋の表記を行う際には、鉄筋の直径はφ〇〇、鉄筋のピッチについては@〇〇といった形で寸法を表記していきます。
・土台、梁などの構造躯体
次に矩計図で重要な部分は土台や梁などの構造躯体です。基礎の上に設置される土台や柱の上に設置される梁は四角の中に×を書いて他の部材と区別します。
サイズも設置箇所によってさまざまで105×105、105×210といった形でサイズを表記していきます。
・壁、床
矩計図では壁や床の断面についての情報を表すため、仕上げ材と共に下地材などの情報が必要です。特に断熱材の表記は矩計図では特殊なものといえます。
網掛けのような表記でハッチングを行い断熱材を表現していきます。その他にも、床や壁の仕上げの材料、その厚みについても記入が必要です。それらの厚さについては、t=〇〇 高さについてはH=〇〇と表記します。
・屋根、外壁
矩計図では、屋根や外壁の仕上げ材などについても書いていきます。住宅の場合は、屋根には瓦、ガルバリウム鋼板、カラーベストなどが多く使用されています。
材料ごとで図面上の表記や厚みも違うため注意が必要です。屋根の勾配の表記も特殊で、三角形に数字を記載して勾配を表します。
外壁の場合は、サイディング、モルタルなどの左官壁などが多いです。厚みが薄いため線だけ表現する場合もありますが、最近では、通気層など設けた施工方法が一般化しているため、その分を確保し明記した表現が必要です。
・住宅設備、サッシ、建具
切断面にサッシや建具があればそれらの矩計図に落とし込む必要があります。寸法まで記入することはないが、ガラスや戸厚みの表現が必要であるため、使用する製品を理解しておきましょう。
サッシについては外部の納まりとの兼ね合いも出てくるため、サッシ枠の部分など複雑になる部分も正確な表記が重要です。
上記は一例ですが、矩計図は多くの情報を図面に落とし込む必要があるため、図面作成のルールや凡例などに沿って正確な図面作成を行いましょう。
矩計図の書き方:記法
矩計図は図面に書いていく内容が豊富にあるため、記入漏れや表記ミスなどが発生しやすい傾向にあります。そのため、矩計図を書いて行く際には、他の建築図面と同様に手順が存在します。
まだ矩計図に慣れないうちは下記の手順に沿って図面作成を行うことがおすすめです。
1.基準線、通り芯、階高など
まず始めに図面作成の基準となってくる、通り芯や階高などを書いていきます。この基準となる線をもとに寸法が決まってくるため、間違いのないよう気を付けましょう。
2.躯体や構造躯体部分
基準線が書き終わったら、躯体部分や構造躯体の部分を書いていきます。躯体である壁や、構造躯体の柱や梁などを書いていきます。柱や梁などの構造躯体のサイズに注意して記入していきましょう。
3.下地、仕上げ材等(壁、天井)
構造躯体などが書き終えたら、下地材や仕上げ材の部分の書き込みを行います。内装壁の仕上げ材や、天井下地、仕上げ材など各部位で書き込みをしていきます。
例えば内装壁部分であれば、下地に石膏ボード厚み12.5㎜+ビニールクロス仕上げといった情報を記入していきます。
床部分では、フローリング、畳、クッションフロアなど材料によって下地の種類も変わるため、間違いのないよう記入していきましょう。
4.仕上げ材料部分
下地材部分などの記入が完了したら、本格的な仕上げ材の記入を行います。タイルや住宅設備、サッシ、建具などが該当してきます。
サッシなどは、納まりの部分の確認にも必要となってくるため、わかりやすい表記が必要です。サッシ、建具は内法高さといった、下地材の位置にも影響してくるため、仕上げ材のサイズにも注意しましょう。
5.見えがかり部分
次に見えがかり部分について記入していきます。見えがかりとは、部材が表面に出て見える部分のことをいいます。
図面をわかりやすくするために必要な部分ですので、量は少ないですが漏れなく記入していきましょう。
6.ハッチング、文字、寸法
最後に文字や寸法などの情報と合わせて、ハッチングなどで、図面の精度を上げていきます。寸法だけでなく、室名や使用材料など必要な情報を追記していきます。
さらに図面上にハッチングを行います。線だけで書かれた図面では、どこまでがどの部材や材料なのか判別がしづらいため、斜線などを用いて、見やすくわかりやすい図面に仕上げていきます。
矩計図と断面図の違い
矩計図と似た図面に断面図があります。どちらの図面も建物を垂直に切断した切断面の情報を書いた図面です。この2つの図面には大きな違いがあります。
まず図面に書いてある情報量が違います。
矩計図の方が情報量が多く、断面図の方が少ないです。
高さの情報を得ることができるこれら2つの図面、矩計図の場合は室内の天井高さだけでなく、階高や天井懐の高さや軒高といったさまざまな高さ関係の寸法が表示されます。
一方断面図は室内の高さや階高などの記入はあっても、その他の寸法については記載がない場合が多いです。
その他にも、仕上げ材料などの種類や躯体寸法といった情報については矩計図でなければ分かりません。
このように情報量に大きな差があるため、簡易的なものは断面図、より詳しい図面は矩計図といえます。違いを理解してそれぞれ必要な場面ごとに使い分けをしていきましょう。
おススメの矩計図作成ツール
ここからは情報量が多く、線だけでなく文字や寸法の入力が多い矩計図を作成するのにおススメの図面作成ツール:EdrawMaxについて紹介します。
EdrawMax(エドラマックス)はWondershare(ワンダーシェアー)が提供するさまざまなクリエイティブソフトのひとつで、作図や製図業務に特化したソフトウェアです。
建築業界だけでなくさまざまな業界でも利用されているツールで、図面作成だけでなくチャートや組織図などの作成も可能となっています。
多種多様なものを作成可能なツールです。
- 複雑なハッチングも豊富なテンプレートの中から選択可能。
- テンプレートが豊富にあるため、矩計図で記入が必要な多くの情報や符号や凡例を効率的に作成可能。
- 直感的な操作性で、定型の図形の種類も多く、建築図面も効率的に作成が可能。
縮尺が大きく、文字入力が多い矩計図は他の図面に比べて特殊な面がありますが、EdrawMaxの機能を使用していけば、効率的な図面作成が可能です。
まとめ
今回の記事では、矩計図とはどういった図面なのか、その読み方、書き方などについて詳しく解説していきました。建築図面のひとつである矩計図は、同じ建築図面の断面図と似ていますが、その内容は全く違います。今回の記事を参考に情報量が多く、より詳細な内容が求められる矩計図作成にチャレンジしてみてください。