BPMN(Business Process Model and Notation)とは、業務の開始から終了までのステップと手順をフローチャートで図式化する表記法のことです。BPMNで定められた表記法に従って業務フロー図を描けば業務の現状を把握し、コスト削減や生産性の向上に繋げられます。また、誰が書いても同じ意味として伝わるフロー図になるので、部門や企業の垣根を越えてフローを管理できるようになります。
- 目次 -
Part 1: BPMNとは何?
1.1 BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)とは?
近年、BPM(Business Process Management)という言葉を聞くようになりました。これは、業務の流れ(プロセス)をモデル化して課題を抽出・分析し、解決のための新しい業務プロセスを創出して継続的に業務を改善するものです。
BPMで行う作業のひとつに業務フロー図の作成があります。これは、「ある目的にそって、仕事の過程を抽象化」してフロー図にし、業務全体の流れを可視化します。これにより、複雑化した業務の現状を把握し、コスト削減や生産性の向上に繋げることができます。
BPMで描かれる業務フロー図は、立場や目的によって表現方法が異なります。また、使われる用語の示す意味や内容も違います。つまり作図する部門によってルールが大きく異なるため、別の部門や企業の人間がフローを見ても理解することができず、コミュニケーションがうまくいかないことが大きな問題として認識されてきました。
この問題を解消するために登場したのがBPMN(Business Process Model and Notation)です。BPMNは業務フロー図を描く際のルールを明確化したもので、BPMNの表記法で書かれた業務フロー図は「誰が書いても同じ意味として伝わる」ため、部門や企業の垣根を越えて共通言語として扱うことができます。
1.2 BPMN2.0とは
BPMNは、BPMツール・ベンダーやビジネス・アナリストが集まって組織したBPMI(Business Process Management Initiative)が標準化し、2004年5月にBPMN 1.0を公開。その後、2006年2月にOMG(Object Management group)が最終採択版を公開しました。
BPMN1.xでは、作業の流れの大枠を可視化する「記述モデル」、例外処理や業務ルールの埋め込み、プロセスの意味を定義する「分析モデル」の用途(いずれも上流工程)に主眼が置かれており、具体的な仕様やサービスを組み込む「実行可能モデル」のフロー(下流工程)を描くには図形要素や属性が不足していました。
これを解消するために策定されたのがBPMN2.0です。ビジネスからITまでの広い範囲の要件をカバーする図形要素や属性が追加され、2010年6月に最終採択版が公開されました。なお、BPMN1.xでは「Business Process Modeling Notation」の略でしたが、BPMN2.0からは「Business Process Model and Notation」に改められています。
Part 2: BPMNの用途
2.1 BPMNとデータフローの違い
業務で使用するフロー図にはいくつかの種類がありますが、その中でよく使われるものに「データフロー」があります。同じフロー図ということでBPMNと混同しがちですが、目的が次のように異なります。
・データフロー
データフローは情報システムを通るデータの流れを可視化することが目的です。たとえば、「作業で何かをインプットしたら、どのような書類やデータがアウトプットされるか」といったデータによる繋がりを可視化できます。データフローは、構造化システム分析・設計などで使われます。
・BPMN
BPMNは、関係者が共通に理解しておくべき内容を流れで示すことにより、業務全体の流れを可視化することが目的です。そのため、BPMNの表記法で描くフロー図は、業務を実行する際の始め方、役割分担、各担当の仕事内容、各方面とのやり取りなどが中心になります。つまり、BPMNではビジネスプロセス(仕事の進め方)を中心としたフローが対象ですので、「データフロー」はBPMNの範囲外になります。
2.2 BPMNの利用
BPMNで描かれるフロー図は次の3種類のサブモデルに分類されます。BPMNでは同じ組織内だけでなく、他の部門や企業と協業するシーンでも使われますので、フロー図がどのサブモデルに分類されるか明確に区別できるようにしておいたほうがいいでしょう。
・個別ビジネスプロセス(プレイベートビジネスプロセス)
特定の組織内でのビジネスプロセスを描くモデルです。個別ビジネスプロセスは、常に単一のプールに存在し、プールの境界を越えることはありません。個別ビジネスプロセスは、「ワークフロー」「BPMプロセス」と呼ばれることがあります。
・抽象プロセス(パブリックプロセス)
個別ビジネスプロセス間で発生する相互のやり取りを描くモデルです。具体的には、個別ビジネスプロセス間をメッセージフローで結んで描きます。抽象プロセスでは相互のやり取りに関するフローが中心となるため、これに関係しないプロセスの詳細は描きません。
・協業プロセス(コラボレーションプロセス)
複数の部門や企業で協業するビジネスプロセスを描くモデルです。協業プロセスを1つのプールに描く場合は、部門や企業をレーンで区切ります。複数の抽象プロセスをメッセージフローで結んで描くこともあります。協業プロセスと関連する個別ビジネスプロセスを一緒に描き、両者の関連を描くことも可能です。
Part 3: BPMNの基本要素
BPMNを表記する要素は5つのカテゴリーに分類され、その要素の中にさまざまな図形や記号があります。基本要素を理解すればBPMNの表記法でフロー図を作成できるので、どのような要素や図形があるか把握しておきましょう。
・フローオブジェクト(Flow Object)
BPMNでフローを描く際の基本的な図形要素です。
名前 | 説明 | 図形 |
---|---|---|
イベント | プロセスの開始、中間、完了を示します。これらはひとつのフロー図の中にひとつしか利用されません。通常、開始は細線の円、中間は二重線の円、終了は太線の円で使い分けます。 | |
アクティビティ | 人またはシステムによって実行すべき作業を示します。アクティビティは「タスク」と「サブプロセス」に分かれており、サブプロセスの場合は底辺にプラス記号を付けます。 | |
ゲートウェイ | 条件分岐や並行処理を示します。ゲートウェイは、交差する点に配置します。 |
・接続オブジェクト(Connecting Object)
フローオブジェクトを結ぶための矢印やラインです。
名前 | 説明 | 図形 |
---|---|---|
シーケンスフロー | 業務の順序を示す矢印です。業務の進行方向で正しく繋がるように記号間をすべて結びます。 | |
メッセージフロー | 別のフロー図へのやりとりが発生する際に使うラインです。コメントを書いて結びます | |
関連 | フローオブジェクトと成果物の関連を示すときに使うラインです。関連するものを結びます。 |
・スイムレーン(Swimlane)
スイムレーンは、フローを描くキャンバスに相当する要素です。
名前 | 説明 | 図形 |
---|---|---|
プール | 一連のビジネスプロセスを記述する範囲を示します。フロー全体を描くためのキャンバスにあたる部分と考えるとわかりやすいでしょう。 | |
レーン | タスクを実行するユーザーや部署の範囲を示します。関連するメンバーが多い場合、レーンを設けることで各タスクの担当者が明確にできます。担当者、部署、企業といった単位で分割します。 |
・データオブジェクト(Data Object)
プロセス内におけるデータ入出力など、データに関する情 報を示す図形要素です。
名前 | 説明 | 図形 |
---|---|---|
データオブジェクト | アクティビティのデータの入出力や収集を示します。 | |
データストア | プロセスがデータを読み取ったり、書き込んだりする場所を示します。データベースなどに使用します。 |
・成果物(Artifact)
追加の情報を表す要素です。フローに直接影響しない補足情報などに使います。
名前 | 説明 | 図形 |
---|---|---|
グループ | 関連する作業を囲み、グループとして示します。 | |
テキスト注釈 | その要素に関する補足情報を示します。 |
Part 4: BPD(Business Process Diagram)の種類
BPMNの表記法によって描かれたフロー図をBPD(Business Process Diagram)と呼びます。これは「BP図」と呼ばれることもあります。
BPMNには3つのサブモデルがありますが、これを組み合わせることにより複雑なBPDを描くことが可能です。例として次のようなBPDがあります。
ただし、組み合わせるサブモデルが多すぎると、理解しにくくなる恐れがあるので注意が必要です。
- 機能の内訳でない高度に抽象化された個別プロセス*
- 詳細な個別ビジネスプロセス
- 現在または従来のビジネスプロセス*
- 将来または新規のビジネスプロセス
- 1つ以上の外部実体(ブラックボックス化されたプロセス)と相互にやり取りする個別ビジネスプロセス
- 相互にやり取り複数の個別ビジネスプロセス
- 詳細な個別ビジネスプロセスと抽象プロセスの関係
- 詳細な個別ビジネスプロセスと協業プロセスの関係
- 複数の抽象プロセス*
- 抽象プロセスと協業プロセスの関係*
- 協業プロセスのみ(たとえばebXML BPSSやRosettaNet)*
- 抽象プロセスや協業プロセスを介して相互にやり取りする2つ以上の詳細な個別ビジネスプロセス
※「*」の付いたものは実行可能言語にマップされないことがあります。
Part 5: BPMNを書くためのコツ
業務フロー図を描く場合、いきなりツールを使ってフロー図を描き始めると、骨子の修正やタスクの抜けなどが発生しやすくなり、余計に時間がかかる恐れがあります。
そのため、作成前にしっかりと準備を行っておくことが重要です。具体的には次のような準備をしておくといいでしょう。
a. 業務の目的とゴールを決める
フローは業務の目的やゴールによって記載する内容が大きく変わってきます。もし、目的やゴールを不明瞭のまま描き始めると、フロー自体が曖昧なものになってしまいます。そのため、目的やゴールを事前に明確にしておきます。
b. 担当者や部署を洗い出し、タスクをリストアップする
業務に関わる部署や担当者などを洗い出します。また、業務に関わる人には全員が共通認識を持てるように打ち合わせなどをしておくことも重要です。また、打ち合わせを通じて、作業や処理などのタスクもリストアップしておきましょう。
c. 必要なタスクを洗い出す
タスクをリストアップできたら、必要なタスクを洗い出します。この際、はじめに抽象度の高いタスクを洗い出しましょう。抽象度の高いタスクを洗い出すと全体像を把握しやすくなり、重要なタスクの抜けを防止できます。次に必要な細かいタスクを洗い出します。特に開始や終了のタイミング、判断が必要なタスクは細かくチェックしておくのがポイントです。
Part 6: 業務フロー専門ツールーーEdrawMaxの特徴
EdrawMax(エドラマックス)は、BPMNで作図するのに便利な機能を搭載したBPMNモデリングツールです。次のような特徴があり、ユーザーの作図を支援します。
★ 直感的な操作で作図できる
EdrawMaxにはBPMN2.0の図形要素はすべて用意されており、これらをドラッグ&ドロップで直感的に配置や移動できます。
★ 豊富なテンプレートやサンプルを用意
編集可能なテンプレートを豊富に搭載しているので、目的のフロー図を簡単に作成することができます。またサンプルを活用すれば、BPMNの作図に慣れていない人でも新たな業務フロー図を容易に作成することが可能です。
★ 作図支援機能が充実
接続線の自動接続、図形の揃えや間隔調整といった面倒な操作をボタンひとつで支援。ストレスなく作図に集中できます。
★ メンバーとのコラボレーションが可能
EdrawMaxクラウドブラザー
EdrawMaxはクラウドに完全対応しているので、いつでもどこにいても作図が可能。また、メンバーとリアルタイムの共同作業が行えます。
Part 7: まとめ
BPMNは、業務フロー図を描く際のルールを明確化した表記法で、業務の流れを可視化することにより、コスト削減や生産性の向上に繋げられます。また、「誰が書いても同じ意味として伝わる」ため、業務フロー図が部門や企業の垣根を越え、共通言語として扱うことができます。
BPMNで業務フロー図を作成する場合に便利なツールがEdrawMaxです。直感的な操作と充実した支援機能により、ストレスなく作図することが可能。無料で利用できるテンプレートやサンプルを活用すれば、誰でも素早く簡単に作図できます。また、クラウドにも完全に対応しており、チームや関係者とのリアルタイムなやり取りが可能です。