AWS構成図とは、AWS(Amazon Web Service)でネットワークを構築する際に使われる設計図のようなものです。わかりやすい構成図があると現状が把握しやすく、業務の効率化に繋がります。しかし、構成図の作成は面倒で多くの時間を費やす大変な仕事になることがあります。そこで活躍するのが作図ツール。AWSに対応したツールを使えば効率的に作図できるので、面倒な作図作業を大幅に時短してくれます。
Part 1: AWS(アーキテクチャ)とは?
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AWS(Amazon Web Service)とは、世界最大手のインターネットショッピングサイト・Amazonが提供しているWebサービスで、ストレージやデータベース、サーバーなど、さまざまなサービスを貸し出しています。これらのサービスの総称を「AWS」と呼びます。
AWSは数多くのサービスを提供しており、その数は大きく分けて90以上、細分化すると700以上です。そのため、ユーザーはニーズに合わせて細かくサービスを選択できるのが大きな特徴です。AWSが提供する代表的なサービスには、仮想サーバーを構築・運用できる「EC2」、コンテンツを配信できる「S3」などがあります。
AWSは、あくまでもシステム構築に必要なサービスやインフラを享受できるサービスなので、必要な開発やカスタマイズはユーザー自身が行う必要あります。そのため、AWSを導入しても、システム開発の知識や技術がないと運用に行き詰る恐れがあります。
AWSを導入してスムーズに運用するには、構築するシステムやネットワークの設計図ともいうべき「AWS構成図」の作成が必要です。これはシステムやネットワークの繋がりを視覚的に整理したもので、AWSで環境を構築する上で必要不可欠なものです。わかりやすい構成図があれば業務の現状などを把握しやすく、効率化やコミュニケーションの円滑化につながります。また問題が起きても問題点を視覚的に特定しやすくなります。
AWS構成図の作成は手書きでも構いませんし、エクセルやパワーポイントなどの汎用的なツールで作っても問題ありません。しかし、汎用的なツールではAWSのさまざまな機能を示すアイコンが用意されておらず、思いのほか作成が面倒です。そのため、AWS構成図を作成するには、AWSに対応したサードパーティ製のツールを使うのがベストといえるでしょう。
Part 2: AWSの使用途と利用できるサービス
AWSでは多くのサービスを提供していますが、種別として「サービス系」と「プラットフォーム系」の2つに分けることができ、そこからさらにサービスが細分化されています。AWSにはどのようなサービスがあるかを確認していきましょう。
■サービス系
サービス | 内容 | 対応するサービス名 |
---|---|---|
サーバー環境構築 | OSを乗せた仮想環境をクラウド上に作成して構築できる。 | EC2 |
データ保存 | クラウド上に用意されたストレージにデータを保存できる。 | S3 |
コンテンツ配信 | 静的コンテンツ(画像や動画、HTML/CSSなど)を配信するサーバーを構築できる | S3 |
データベース | AWSが提供するデータベースを利用できる。DBエンジンは、mysqlやoracleなどの6つから選べる。 | RDS |
専用回線 | ユーザーのネットワーク環境からAWSまで専用線で接続できる。 | AWS Direct Connect |
セキュリティ対策 | AWSのEC2インスタンスにおいて脆弱性診断を自動で行う。 | Amazon Inspector |
■プラットフォーム系
サービス | 内容 | 対応するサービス名 |
---|---|---|
AI活用/データ分析 | 機械学習の知識がなくても、レコメンド機能を簡単に開発できる。 | Amazon Personalize |
ワークフロー管理 | 複数の環境の間でアプリケーションを連携させ、AWSで行う処理をワークフロー形式で管理できる。 | Amazon Simple Workflow |
メール/通知 | メールを配信できる。 | AWS SES |
Part 3: AWSを利用するメリットとデメリット
AWSは豊富な拡張性や低コストといったメリットが多く存在しますが、そのメリットが故にデメリットに転じているものもあります。AWSにはどのようなメリット・デメリットがあるのか確認していきましょう。
3.1 メリット
・コストを抑えられる
ユーザー自身がサーバーを構築する「オンプレミスサーバー」の場合、構築のためにハードウェアやソフトウェアの購入が必要なため、初期コストがかかります。しかしAWSはハードウェアやソフトウェアの購入は不要なため、断然低コストで導入できます。また、必要なサービスを必要な時に必要な分だけ利用できるため、運用コストも抑えられます。
・高いセキュリティ
AWSは専門のセキュリティ部隊を配置し、セキュリティ対策を行っているので、高い信頼性を誇ります。その証拠に、セキュリティに厳しい金融業界や、政府機関でも採用されています。また、耐久性・拡張性を重視したストレージによるバックアップ体制や災害対策が施されており、物理的なトラブルが起きた場合でも安心です。
・環境の構築や拡張が容易
AWSはサイト上で設定変更を行うだけでサーバーの台数、CPU、メモリ、ストレージのサイズなどを変更できます。このようにスペックや構成を柔軟に変更できるので、構成の変更が必要になっても迅速に対応できます。
3.2 デメリット
・必要なサービスがわかりづらい
AWSは豊富に提供されるサービスがメリットのひとつですが、サービスの数が多すぎて自分に必要な適切なサービスが選定するのが難しいデメリットがあります。知識が少ないユーザーにとっては、何をどう組み合わせていけばいいのか、適切な判断がしづらいのは大きなデメリットです。
・運用コストが割高になる可能性がある
AWSは必要な時に必要な分だけ利用できる「従量課金」なので、必要なコストだけ支払えばよいのがメリットです。しかし、前述の通り、サービスが多すぎてどれが必要なサービスかわからず、不要なサービスを利用してしまうというケースが少なくありません。そのため、不要な利用料金の支払いが発生し、運用コストが割高になってしまうことがあります。
・ダウンタイムへの備えが必要
AWSはサービスの機能強化や改善、脆弱性への対応のためメンテナンスやアップデートを行っています。そのため、ダウンタイム(サービスを利用できない時間)が発生する可能性があるので、構成を冗長化するなどして備える必要があります。ただし、これはAWSに限らず、クラウドサービスでは起こりうる問題ですので、オンプレミスサーバー以外の環境を選択したときにいえるデメリットといえます。
Part 4: AWS構成図の要素
AWS構成図は「AWSアーキテクチャアイコン」(旧称「AWSシンプルアイコン」)という要素で構成されます。これはAWSサービスの設計や配置、接続形態などを分かりやすく説明するための図形です。
AWS構成図を作成する最初の手順は、AWSアーキテクチャアイコンの準備です。そのため、どのようなものがあり、何が必要になるかを知っておいたほうがいいでしょう。
■コンピューティング
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) | Amazon Personalize | |
AWS Lambda | バックエンド・プロセス・ロジック | |
Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) | コンテナ管理 | |
AWS Elastic Beanstalk | Webアプリケーション |
■ストレージ
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) | オブジェクトのストレージ | |
Amazon Elastic File System (Amazon EFS) | ファイルストレージサービス | |
AWS Storage Gateway | ハイブリッドクラウドストレージサービス | |
AWS Snowball | ペタバイト規模のデータ転送サービス | |
Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) | 仮想サーバー・ディスク・インフラストラクチャ |
■ネットワークとコンテンツ配信
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon CloudFront | コンテンツ配信 | |
Amazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC) | 仮想プライベート クラウド | |
Amazon Route 53 | ドメインネームシステム(DNS)サービス | |
AWS Direct Connect | 専用線サービス | |
Elastic Load Balancing | 負荷を分散するロードバランシングサービス |
■ネットワークとコンテンツ配信
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) | リレーショナルデータベース | |
Amazon DynamoDB | 非リレーショナルデータベース | |
Amazon ElastiCache | マネージド型インメモリキャッシュサービス |
■分析
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon Redshift | データウェアハウスサービス | |
Amazon EMR | ビッグデータの分析サービス | |
AWS Data Pipeline | データの移動や変換を簡単に自動化できるウェブサービス | |
Amazon Kinesis | 動画・音声・アプリケーションログ・IoTデバイスからのセンサーデータなど、ストリーミングデータに対してリアルタイムで収集・処理・分析できる完全マネージド型のサービス |
■ビジネスアプリケーション
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
Amazon Simple Queue Service (Amazon SQS) | フルマネージド型のメッセージキューイングサービス | |
Amazon API Gateway | APIの作成・維持・保護を行う完全マネージド型のサービス |
■管理と監視
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
AWS OpsWorks | マネージド型インスタンスを利用できるようになる構成管理サービス | |
Amazon CloudWatch | AWS で実行するアプリケーションのモニタリングサービス | |
AWS Trusted Advisor | ユーザーのAWS環境を自動で精査して推奨設定を知らせるサービス | |
AWS Config | AWSアカウントにあるAWSリソースの設定を評価・監査・審査できるサービス |
■セキュリティ・アイデンティティー・コンプライアンス
アイコン | サービス | 機能 |
---|---|---|
AWS Identity and Access Management (IAM) | IDとアクセス権を管理するサービス | |
AWS Key Management Service (AWS KMS) | 暗号化キーの作成・管理サービス | |
AWS WAF | ウェブアプリケーション向けファイアウォールサービス | |
Amazon Inspector | EC2 インスタンスにおいて脆弱性診断を自動実施するサービス |
Part 5: AWS構成図を作成できるおすすめツール5選
AWS構成図を作成できるサードパーティ製のツールには、アプリで提供されているものやWebサービスとして提供されているものなどがあります。
ここではAWS構成図の作成に対応したおすすめのツールを紹介していきましょう。
■EdrawMax
「EdrawMax」はさまざまなプラットフォームで利用できるオールインワンの作図アプリケーションです。
AWS構成図で使われるAWSアイコンセットは、あらかじめ図形ライブラリに用意されているのですぐに利用が可能。ドラッグ&ドロップするだけで簡単に構成図を作成できるのが大きな特徴です。多くの作図ツールはウェブ版のみの提供ですが、EdrawMaxはWindows/Mac/Linuxなど、現在利用できるほぼすべての端末向けにアプリを提供しています。そのため、ウェブが使えない環境であっても、いつでもどこでも作業を進めることができます。
- 提供先:Wondershare Edrawsoft
- 製品ページ:https://www.edrawsoft.com/jp/edraw-max/
- 対応OS:Windows/Mac/Linux グラウンド版あり
- 利用プラン:サブスクリプション/買い切り
■Miro
「Miro」は、メンバー間のコラボレーションが特徴的なオンラインホワイトボードサービスです。直感的に操作できるのが特徴で、あまり操作に慣れていない人でも容易に作図をはじめられるほどの簡単な操作性が魅力です。
なお、標準ではAWSのアイコンセットが用意されていないので、「AWS Architecture Icons」(https://miro.com/marketplace/aws-icons/)を別途追加する必要があります。
- 提供先:Miro Inc.
- 製品ページ:https://miro.com/ja/
- 対応OS:グラウンド
- 利用プラン:サブスクリプション
■Cacoo
「Cacoo」(カクー)は日本発のオンライン作図サービスです。
日本発のサービスなので、日本語環境で問題なく利用できるのが大きなメリットです。また、相手がCacooのアカウントを保有していなくても、リンクを送付するだけで図を共有できるなど、共有が強いのも特徴のひとつです。
AWS構成図のテンプレートやAWSアイコンが豊富に備わっているので、すぐに作成が可能。「AWSインポート」を使えば、現在のAWSの構成をそのまま作図することもできます。
- 提供先:株式会社ヌーラボ
- 製品ページ:https://cacoo.com/ja/
- 対応OS:グラウンド
- 利用プラン:サブスクリプション
■Lucidchart
海外で高い知名度を誇る作図ツールサービスが「Lucidchart」です。
テンプレートが豊富で、ネットワーク系の作図に強いのが特徴です。データはクラウドに保存するので、ネットにさえ繋がれば作業場所を問わないのがメリットです。
「Lucidchart Cloud Insights for AWS」というアドオンが提供されており、AWSインフラストラクチャをインポートするとAWS構成図を簡単に作成できます。
- 提供先:株式会社ヌーラボ
- 製品ページ:https://www.lucidchart.com/pages/ja
- 対応OS:グラウンド
- 利用プラン:サブスクリプション
■Visio
「Visio」は、Microsoftが提供するビジネス用グラフィックス作成ツールです。Microsoftのアプリなだけあって、操作性は他のOffice製品に近く、Officeアプリに慣れている人なら容易に使えるのが特徴です。また、Office製品との親和性も高く、作図したデータを他のOffice製品と容易に連携させることができます。
ただし、Microsoft 365の一部として提供されているので、コストが割高な点、必要な環境などにおいてやや融通が効かない点は注意が必要です。
- 提供先:マイクロソフト株式会社
- 製品ページ:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/visio/flowchart-software
- 対応OS:Windous グラウンド版あり
- 利用プラン:サブスクリプション/買い切り
Part 6: まとめ
AWS構成図は、AWSでのシステム構築やスムーズな運用に必須なものです。構成図を上手く作図するコツは、AWSをしっかりと理解し、自分が使いやすいツールを使って作成することでしょう。作図ツールは無料試用できるものが多いので、まずは実際に触れてみて、自分に合ったツールを探すのがおすすめです。